マキマ、パワー、姫野、そしてレゼ…ウブなデンジを翻弄する「チェンソーマン」の魅惑的な女性キャラたち
デンジに生まれて初めての青春をもたらした可憐な少女“レゼ”
今回の劇場版のヒロインは、テレビシリーズの最後に一瞬だけ登場した少女レゼ。急に降りだした雨を避けるため、デンジが近くの電話ボックスに駆け込んだところ、同じように雨宿りしようとレゼが入ってきたのが2人の運命の出会いだ。狭い密室の中で、急速に打ち解け合うデンジとレゼ。自分が好きなのはマキマさんだけだと思いながら、人懐っこいレゼに惹かれていくデンジは、彼女がバイトをしているカフェに足しげく通うようになる。
それまで出会った女性は公安関係者ばかりだったデンジにとって、ごく普通の女の子であるレゼと過ごす時間はとても新鮮。「デンジくんみたいなおもしろい人初めて」、「私が全部教えてあげる」といったレゼの言葉の一つ一つにドキドキし、(俺は俺のことを好きな人が好きだ)と自覚するデンジの思春期の少年らしい気持ちもリアルで共感を呼ぶ。
カフェで他愛もないおしゃべりをしながら一緒に過ごす時間。ワクワクする夏祭りのデート。すてきなシーンがたくさんあるなか、特に印象に残るのは、学校に通ったことがないデンジが、レゼに誘われて夜の学校に忍び込み、教室で学校ごっこをしたり、プールで泳ぎを習ったりする美しいシーンだ。青春ドラマのような一連の出来事のなにもかもがデンジには初めての経験。だが本来なら、デンジはこういう生活を送っていたはずだと思えるだけに、「公安をやめて一緒に遠くに逃げよう」とレゼに言われた時の彼の葛藤がせつない。
天真爛漫に見えて、時折ふと孤独な陰を感じさせるレゼと、彼女への恋心に揺れるデンジ。後半の疾走感あふれる壮絶なバトルアクションを際立たせる、2人のエモーショナルなロマンスと束の間の青春のきらめきは、本作の大きな見どころである。これまでも、様々な女性たちから影響を受けてきたデンジがレゼと出会ったことで、心にどのような変化が生まれるのか。やんちゃな少年だったデンジが見せる新たな一面に注目してほしい。
文/石塚圭子