「キャラクターが“生きている”感がある」100mにすべてを捧げる男たちの半生を描く『ひゃくえむ。』映画&原作ファンが感じたリアルとは?
「チ。―地球の運動について―」で一世を風靡した魚豊の作品のなかでも、完結から5年以上が経ったいまもなお高い人気を誇る連載デビュー作をアニメ化した映画『ひゃくえむ。』(9月19日公開)。天賦の才能を持つトガシ(声:松坂桃李)と努力家の小宮(声:染谷将太)の2人を中心に、陸上の100m競走にすべてを懸ける男たちの情熱と狂気を描く。MOVIE WALKER PRESSでは公開に先駆けて岩井澤健治監督によるティーチイン付きで本作の試写会を開催。来場者にアンケートを実施した。
「魚豊先生の『ひゃくえむ。』の世界に色が付き、音が付き、 動きが付き、臨場感あふれるアニメーション作品となっていて感動した」(20代・女性)
「原作とは違う点がありながらも『ひゃくえむ。』という1本の映画としてすばらしかった」(10代・女性)
といった作品の感想はもちろん、徹底されたリアリティ表現や原作との違い、キャラクターの描き方などについて多くのコメントが寄せられた。映画ファン、原作ファンは本作をどう受け取ったのか?ここではアンケートの回答をもとに、作品の魅力をひも解いていく。
小学生から社会人まで、100mを走り続ける男たちの半生
生まれつき足が速く、走ることで友だちも居場所も手に入れてきた“天才”トガシと、日々のつらさから逃れるため、ただただ走っていた小宮。偶然の出会いをきっかけに、トガシが小宮に走り方を教えることになると、貪欲に記録を追い求める小宮はいつしかトガシに迫る走りを見せ始める。
ライバルであり親友のような存在だった2人は、小宮の転校によって離ればなれに。それから数年後、天才スプリンターとして勝ち続けないとならない重圧に押しつぶされそうなトガシの前に、トップスプリンターとなった小宮が現れる。それぞれ異なる動機を抱く2人は、そこから社会人まで走り続けていくことに…。
切磋琢磨し合う主人公トガシと小宮の熱い物語に圧倒される
「『ひゃくえむ。』は、この2人の話なんだと改めて思いました」(40代・女性)とあるように、トガシと小宮が走ることを通じて、それぞれの人生を積み重ねていく本作。異なる信念、動機を持つ正反対のキャラクターだが、どちらも魅力的で、互いに影響を与え合う関係性に感動した人も多かったようだ。
「原作のイメージとぴったりだった」(10代・女性)というトガシは生まれながらに才能を持っていたため、ただほかの人より速いという理由だけで走っていたが、小宮との出会いから陸上に情熱を抱くように。それゆえにスランプや挫折を経験するキャラクターで、その人間らしさが心を揺さぶる。
「最初は走ることにそれほどの気持ちは感じられなかったが、徐々に生まれる執着が印象的だった」(10代・女性)
「最初は天才、のちの努力の人で、一番好きだった」(30代・女性)
「まじでイイヤツ。一番応援したい存在でした。イイヤツ」(10代・女性)
一方の小宮は“つらい現実を忘れるため”というネガティブな理由で走っていたが、記録を縮める喜びに目覚め、執念を武器に気づけば トップアスリートの一人まで上り詰めた「一瞬の栄光のために人生を捨てられる人」(10代・女性)。内なる情熱を秘めたキャラクター像を巧みに表現した染谷の声の演技にも絶賛が寄せられていた。
「あまり感情が表に出ないキャラだが、わずかな声の震えの演技がすばらしかったです」(10代・女性)
「キャラに合った声でした」(30代・男性)