チョ・ジョンソクが振り返る『大統領暗殺裁判 16日間の真実』でのイ・ソンギュンとの共演「僕たちの関係が演技に重なっていた瞬間があった」
「“親しみやすさ”と予測不能なところが僕の俳優としての魅力」
2004年にミュージカル「くるみ割り人形」でデビューしてから21年。「ヘドウィッグ・アンド・アングリー・インチ」などに出演してスターへの道を歩み、いまでは映画とドラマを自在に行き来するチョ・ジョンソク。今年5月には映画『パイロット(原題:파일럿)』で映画部門の最優秀男優賞を受賞し、現在韓国では最新映画『ゾンビになってしまった私の娘(原題:좀비딸)』がヒットを記録中だ。私生活では2018年に歌手GUMMYと結婚し、2020年には長女が誕生。着実に人生と年輪を重ねる彼は、「仕事を選ぶ信念」をこう明かした。
「新人の頃は『この作品もやりたい、あの作品もやりたい、どれも逃したくない』という気持ちがありました。『この役を演じたい』という純粋な気持ちよりも、『この作品をつかみたい』という欲が強かったのです。今は年齢を重ねるにつれて、“俳優チョ・ジョンソクの仕事”ももちろん大切ですが、それ以上に“人間チョ・ジョンソクの人生”も同じくらい大事だと感じるようになりました。いま、この瞬間の自分が一番心からおもしろいと思える物語に自然と惹かれるようになったんです」。
「例えば『ゾンビになってしまった私の娘』もそうです。ちょうど自分が父親になったタイミングで作品に出会ったので、まさに感情移入しやすい時期でした。だからこそ自然に『この作品をやろう』と決断できたのだと思います。自然に選び、自然に生きる。最近の僕の人生において、それが一番大事なテーマになっているような気がします。きっと、選択の連続の中で生きているからこそ、より自然な選択がしたいと思うようになったのかもしれません」。
『大統領暗殺裁判』を、これまで演じた作品とはトーンが異なるキャリアの転換点となる作品だと語る。そしてもうひとつ、ドラマでは「賢い医師生活」を挙げた。
「演じながら、世の中には本当にこんな人がいるんだと、自分自身が驚かされるような瞬間が何度もあって。イ・イクジュンというキャラクターが僕にとっての人生のロールモデルのような存在になっていました。だからこそ、この作品は本当に特別で、大切で、意味のある作品だったと心から思っています」。
落ち着いていて、思慮深い。よどみなく紡ぐ言葉からは、頭の回転の速さがにじみ出る。今年1月には、消費者調査「2025ブランド大賞」で「最も影響力のある男性俳優」映画部門1位も受賞し、まさに幅広い人たちに“信じて観る俳優”として愛されているチョ・ジョンソク。その理由を自身はどう考えるのか尋ねると、控えめな笑顔でこう答えた。
「僕自身が感じるに、“親しみやすさ”というのが自分のひとつの魅力ではないかと思います。実際、多くの方が僕のことをとても親しみをもって見てくださっているような気がしていて。これは俳優としてすごく大きな強みだと思います。今日初めて会ったのに前から知っていたような感覚を抱かせる人もいる。僕のことを、そんなふうに思ってくださる方が多いのではないかと、ちょっと自分で言うのは照れくさいんですけど…。でも、そういう部分が僕の一番の長所なんじゃないかと思っています」。
「とはいえ、僕は親しみやすい役ばかりを演じてきたわけではありません。これからも、新しい演技、新しい役柄、そして新しい作品のなかで、また違った輝きを放てたらという思いがあります。先が読めない、どこへ向かうかわからないような存在感。そんな予測不能なところも、もしかすると僕の俳優としての魅力のひとつなのかもしれません」。
取材・文/桑畑優香