チョ・ジョンソクが振り返る『大統領暗殺裁判 16日間の真実』でのイ・ソンギュンとの共演「僕たちの関係が演技に重なっていた瞬間があった」

チョ・ジョンソクが振り返る『大統領暗殺裁判 16日間の真実』でのイ・ソンギュンとの共演「僕たちの関係が演技に重なっていた瞬間があった」

「イ・ソンギュンさんは繊細な感性を持っている“ツンデレ”な人です」

劇中とりわけ胸を打つのは、イ・ソンギュン演じるパク・テジュと対峙する取調室のシーンだ。スクリーンに映る二人の緊迫したやりとりの裏には、互いの演技を尊重し合う静かな信頼があった。

チョ・ジョンソクが印象的だったと語る、イ・ソンギュンとの共演シーン
チョ・ジョンソクが印象的だったと語る、イ・ソンギュンとの共演シーン[c]2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.

「チョン・インフとパク・テジュが向き合うあのシーンには、それぞれのキャラクターにとっての目的や役割がはっきりとあると思っています。パク・テジュは、この映画のなかで特に繊細な感情や複雑な内面を表現しなければならないキャラクターです。だから、イ・ソンギュンさんの細やかな演技のディテールを壊さず集中力をできるだけ妨げないように、僕なりに心を配りながら撮影に臨みました。パク・テジュの役割を活かしながら、チョン・インフの気持ちや存在感もしっかりと伝わるように息を合わせた。だからこそ、最終的にすごく良い仕上がりになったのだと思います」。

イ・ソンギュンは撮影後、完成した作品を観ることなく世を去った。チョ・ジョンソクは完成後の試写で、抑えていた感情がこみあげる瞬間があったという。

「これはとても個人的な話になってしまうんですが…。作中の人物をパク・テジュというキャラクターとして見ようと努力していたのに、それが一気に崩れてしまいました。それは、取調室でハイタッチをする場面です。撮影中に、笑いながら『こんなふうにやってみようか』と楽しく試行錯誤していたときのことが心に浮かびました。もうひとつは、パク・テジュの娘からもらったミカンを僕が彼に手渡すシーン。ミカンを見つめるパク・テジュの姿を通じて、彼がどれだけ娘を想っているのか伝わってきて。その2つの瞬間が、とても印象に残っています。たぶんそれは、イ・ソンギュンさんと僕の関係が演技に重なっていた瞬間だからだと思います」。

イ・ソンギュンという俳優を間近で見たチョ・ジョンソクだからこそ、その魅力を語る言葉には説得力がある。

「イ・ソンギュンさんがパク・テジュという人物をきっと完璧に演じきるだろうと、僕は初めから確信していました。というのも、実際に接したイ・ソンギュンさんは、本当に繊細な感性を持っている。それから、ツンデレなんです(笑)。他人の演技をベタほめしない。肩をポンポンと軽く叩きながら『お、いいね』『驚いたね』って言うんです。一見上から目線のようでいて、ちゃんとしたリスペクトがある。“ツンデレ”という言葉で表したかったのは、そういう一面です」。

クーデターを起こしたチョン・ドゥファン元大統領をモデルにしたチョン・サンドゥ
クーデターを起こしたチョン・ドゥファン元大統領をモデルにしたチョン・サンドゥ[c]2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.

もうひとつ心に残る場面として挙げたのは、ゴルフ場でのセリフだ。終盤、裁判で追いつめられたチョン・インフは、裁判を裏で操る合同捜査団長チョン・サンドゥ(ユ・ジェミョン)に膝をついて懇願し、怒りを爆発させる。


「『王になりたいなら、王になれ。金持ちになりたいなら、国中の金を持ってこい。ただし、人を殺すな』とぶつけます。現実には絶対に起こりえないようなシチュエーションですよね。いち弁護士が、巨大権力の中心にいる合同捜査団長に面と向かって暴言を吐くなんて。でも、最初に台本を読んだときから、そのシーンとセリフには胸を打たれました。演じていても強く心に響いた、忘れられない場面でした。『命の尊さはお金より重い』という根源的な問いかけが込められているからです」。


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