「好きなことを貫いていればそれが自信になる」井手上漠が『不思議の国でアリスと』で感じた自分との向き合い方

インタビュー

「好きなことを貫いていればそれが自信になる」井手上漠が『不思議の国でアリスと』で感じた自分との向き合い方

1865年にルイス・キャロルによって生みだされ、いまもなお愛され続けている名作「不思議の国のアリス」が『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』として日本で初めて劇場アニメ化し、8月29日(金)より公開される。アニメーション制作を担うのは、「花咲くいろは」や「SHIROBAKO」、『駒田蒸留所へようこそ』(23)など等身大の若者の奮闘を描いてきたP.A.WORKS。監督には同スタジオの「色づく世界の明日から」「白い砂のアクアトープ」も担当した篠原俊哉、脚本に「薬屋のひとりごと」や「アオのハコ」の柿原優子、コンセプトデザインを「ファイナルファンタジー」シリーズの新井清志が務める。さらに声優陣には、主演の原菜乃華やアリス役のマイカ ピュをはじめ、松岡茉優、山本耕史、八嶋智人、間宮祥太朗、戸田恵子ら豪華な顔ぶれが勢ぞろいした。

主人公は就活がうまくいかず人生に迷っている現代の大学生、安曇野りせ(声:原菜乃華)。周囲に合わせながら生きてきた彼女がひょんなことから不思議の国に入り込み、アリス(声:マイカ ピュ)たち自由奔放なワンダーランドの住人たちに振り回されながら、本当の自分を取り戻していく。そんな本作を鑑賞し、「就職活動に悩み、自分の居場所を見失う主人公りせの姿に共感した」と話すのは、ジェンダーレスモデル、タレントとして活躍する井手上漠。“好きなもの”を大切にすることで“自分らしさ”を見いだしてきた井手上が、作品の魅力と共に主人公りせに重ねながら自身の半生も語ってくれた。

世界中の様々な価値観に触れ、自分の“好き”を大切にすることが自信につながる
世界中の様々な価値観に触れ、自分の“好き”を大切にすることが自信につながる撮影/河内彩

「自分がこの世界に入ったらどう動くだろう?と考えていました」

大学生のりせは、失敗しないように空気を読み、みんなと同じように物事を進めているにもかかわらず、卒業後の進路が決まらないと人生に迷っていた。そんなある日、彼女のもとに亡き祖母(声:戸田恵子)からの招待状が届き、導かれるように不思議なことにあふれたワンダーランドの世界へと入り込んでしまう。そこでりせが出会ったのは、天真爛漫な少女アリス。彼女と一緒に旅を続けるうちに、白ウサギ(声:山口勝平)や青虫(声:山本高広)、ハートの女王(声:松岡茉優)、マッドハッター(声:山本耕史)、チェシャ猫(声:森川智之)といった個性にあふれ、ありのままに生きる住人たちと交流し、自身の生き方を見つめ直していく。

就活がうまくいかず人生に迷っている大学生の安曇野りせ
就活がうまくいかず人生に迷っている大学生の安曇野りせ[c]「不思議の国でアリスと」製作委員会

普段から恋愛テイストの作品を中心に、ジャンルを問わず映画鑑賞を楽しんでいるという井手上。これまでにディズニーのアニメーション版や実写映画など様々な「不思議の国のアリス」を鑑賞してきたと言うが「これは新しいなと思いました。無意識にインプットしているアリスの世界とは違う展開で意表を突かれるところがいくつもあり、すごくおもしろかったです」と感想を語り、本作が非常に新鮮な映像体験になったことが伺える。

特に井手上を惹きつけたのは、まるで自身がりせとしてワンダーランドや物語に入り込んだような感覚になれる没入感だ。普段アニメは客観的に鑑賞するという井手上だが、本作は「自分が作品のなかに入っているような感覚を覚えた」という。この没入感は映像の繊細さも大きな要因だったようだ。「映像がすごく繊細だったので、引き込まれたのかもしれません。本当にリアリティがあって、きっと20年後にはVRで不思議の国を体験できるようになるんだろうなと思うほど。気づいたら、自分がこの世界に入ったらどう動くだろう?と考えていました」。

誰もが覚えのある悩みや感情の揺れ動きが描かれている『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』
誰もが覚えのある悩みや感情の揺れ動きが描かれている『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』[c]「不思議の国でアリスと」製作委員会

「美しさや優しさといった価値観が必ずしも他人と共有できるものではない」

また、「不思議の国のアリス」でおなじみのキャラクターたちが放つ言葉に、井手上はハッと気づかされたことがあったと話す。なかでも、インフルエンサーとして活動している青虫が頑なに成虫=蝶々になることを拒んでいる姿に、「本当の美しさとは?」と問いかけられたような気持ちになったようだ。「大人に成長してしまい、自分に生えた羽に対して『美しくない』と言い放つ青虫もとい蝶々に向かって、りせは『こんなに美しい羽は見たことがない』と伝えます。あのシーンを見た時、美しさや優しさといった価値観は、私たちが育ってきた環境や経験によって形成されるものであって、必ずしも他人と共有できるものではないと改めて気づかされました」。


ワンダーランドの住人たちから恐れられている?ハートの女王
ワンダーランドの住人たちから恐れられている?ハートの女王[c]「不思議の国でアリスと」製作委員会
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