『ターミネーター2』、『ジュラシック・パーク』にもつながるCGの革新性!時代を先取りした『トロン』はなにがすごかったのか?
興行的大ヒットを逃した一方で後世に与えた影響は大きい
こうした苦闘や革新性と対峙し、CGを大規模な宣伝展開に用いながらも、『トロン』は『ポルターガイスト』や『スター・トレックII カーンの逆襲』、『ブレードランナー』、『マッドマックス2』、『遊星からの物体X』といった同年製作のライバル作品に話題を分散され、とりわけスティーヴン・スピルバーグが監督した『E.T.』の世界的大ヒットに注目を奪われた形で、興行的に大ヒットとはいかなかった。
加えて家庭用コンピュータが普及する以前にMCPやプログラム、ユーザーやグリッドといった専門用語が飛び交うストーリーが大衆に支持されたとは言い難い。しかし本作は世界的にCGの存在を周知させ、『ターミネーター2』(91)や『ジュラシック・パーク』(93)、そして『トイ・ストーリー』(95)などのデジタルキャラクター映画を生みだすベースを作った。
受け継がれる革新的な個性と芸術性
さらに、工学デザイナーのシド・ミードやバンド・デシネ作家のジャン“メビウス”ジロー、イラストレーターのピーター・ロイドらが生みだしたプロダクションデザインの数々は、『トロン』を象徴するアイコンとして優れた個性と芸術性を放ち、2010年の『トロン:レガシー』や、シリーズ最新作『トロン:アレス』(10月10日公開)へと世界を拡張させていく。
ことに後者の、電脳世界が現実世界に侵食してくるという設定に、興奮とテクノロジーの大いなる進化を実感してしまう。
文/尾崎一男
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