『近畿地方のある場所について』『IT』など、近年の大ヒットホラーの傾向は?注目作『カラダ探し THE LAST NIGHT』のポジションを考察!
ハラハラしながら楽しめる!ゲーム性に富んだホラーも
これらとは逆に、ゾッとする怖さを醸しだしながら、ゲーム性に振れる作品はハリウッド映画に多い。異常な早さで時間が流れるビーチに閉じ込められた一家が脱出を試みる『オールド』(21)や、強盗に入った若者たちが盲目だが超人的な聴覚を持つ家主に襲われる『ドント・ブリーズ』(16)は、最悪ともいえる状況に置かれた人々の戦いを描いたもの。また、『カラダ探し THE LAST NIGHT』とはシチュエーション的な共通点もある『ファイナル・デッドコースター』(06)は、“死”という運命そのものと肉薄する若者たちのサバイバルをスリリングに描いており、恐怖と緊張状態が一体となって迫って来る。
ジャンプスケアを主体とした作品でも、ゲームやアクションに寄った作品は多い。「死霊館」ユニバースにおける「アナベル」シリーズはその代表格だが、特に『アナベル 死霊博物館』(19)は保管庫という限定空間でのティーンエイジャーたちのサバイバルを、呪物が引き起こす怪現象がスリリングに盛り立てる。『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)もまた、恐怖心につけ込む悪魔的な存在に対峙する子どもたちのサバイバルが展開。恐怖心を克服して敵に立ち向かう彼らの冒険の行き着く先は地下迷宮で、まさにダンジョンでクライマックスを迎える。
『カラダ探し』が位置するのも、『アナベル』や『IT/イット』と同じエリア。これは邦画としては珍しいポジションだ。高校生たちを脅かす“赤い人”は神出鬼没で、むごたらしい惨殺描写を含めてジャンプスケア度はMAX値。「わー!」、「きゃー!」と、つい口に出てしまいそうなショッキング描写も満点になっている。一方で、サバイバル要素はもちろん、バラバラのカラダをすべて集めるというミッションはゲーム的で、失敗するとリセットされてしまうタイムループの設定も生きている。
さらに注目したいのが、高校生たちは恐怖に直面するだけでなく、タイムループを繰り返すうちに強い絆で結ばれていくこと。学級委員長からスポーツマン、いじめられっ子、登校拒否児と、まったく接点のなかった彼らの間に友情が芽生え、ロマンスにも発展する。おばけ屋敷的な設定でありながらも、そんな“つながり”のエピソードが、若い観客のハートを捉えた一因と言えるだろう。この点は『IT/イット』とも共通するところで、学校や家庭内で様々な悩みや問題を抱えた子どもたちが同じ境遇に置かれることで思いを一つにしていく。恐怖と隣り合わせで描かれる瑞々しい青春模様が眩しく映った。