『シークレット・メロディ』で“秘密”を抱えたヒロインを演じたウォン・ジナが語るド・ギョンスへの憧れと信頼「ただそばにいるだけでリラックスさせてくれる」

『シークレット・メロディ』で“秘密”を抱えたヒロインを演じたウォン・ジナが語るド・ギョンスへの憧れと信頼「ただそばにいるだけでリラックスさせてくれる」

ピアノが奏でる美しいメロディをきっかけに出会った男女の、ミステリアスな恋を見つめる『シークレット・メロディ』。人気歌手ジェイ・チョウが監督・脚本・主演を務めた台湾の名ラブストーリーを原案に、舞台を韓国に移して作られた本作で突然主人公の前に現れる大学生ジョンアを演じているのが、ドラマ「地獄が呼んでいる」(21)や映画『ハッピーニューイヤー』(21)で存在感を発揮してきた実力派俳優ウォン・ジナだ。作品ごとに新たな魅力を見せ、注目を集めている彼女に話を聞いた。

「大好きだったからこそ、オリジナルの作品を傷つけてしまうのではないかと心配もしました」

将来を嘱望されていたピアニストとしてドイツで活躍していたものの、原因不明の発作が起きてピアノが弾けなくなってしまった青年ユジュン(ド・ギョンス)が静養のため韓国に戻ってきたところから始まる『シークレット・メロディ』。留学生として大学に通い始めた彼は、どこからか聞こえてきたピアノの調べに導かれ、古い練習室へと足を踏み入れる。そこで目にしたのが、温かな笑顔の持ち主であるジョンアだった。オリジナル映画のファンだったというウォン・ジナはどんな気持ちでこの作品への出演を決めたのだろうか。

CDショップでデートするユジュンとジョンア
CDショップでデートするユジュンとジョンア[c]2025 SOLAIRE PARTNERS LLC & HIVE MEDIA CORP ALL RIGHTS RESERVED

「自分が大好きだったからこそ、オリジナルの『言えない秘密』という作品を傷つけてしまうのではないかと心配もしましたが、一方で、『他の人が出演したら、すごくうらやましく思うだろうな』という気もしたんです。だから、不安はあるけれどまずはやってみようと思いました」。

ユジュンとジョンアはすぐに親しくなり、彼女と過ごす時間のなかでユジュンはもう一度、ピアノに出会い直す。ある“秘密”を抱えた彼女を演じるにあたっては、ポジティブな面を感じてもらおうと努力したという。

劇中重要な鍵を握るのはジェイ・チョウ作曲の「SECRET」
劇中重要な鍵を握るのはジェイ・チョウ作曲の「SECRET」[c]2025 SOLAIRE PARTNERS LLC & HIVE MEDIA CORP ALL RIGHTS RESERVED

「ユジュンと最初に出会った時、ジョンアは恋に落ちたとは思っていませんでした(笑)。初めて出会う人への期待感があった彼女にとっては、『この人はどんな人なのかな?』という好奇心のほうが大きかったのではないでしょうか。ユジュンは気軽に手を差し伸べてくれる親切な人だったので、『初めて会う人が優しい人でよかった』という気持ちもありました。また、ジョンアは“秘密”を持っていますが、相手をだまそうとしてなにかを隠しているのではなく、ユジュンの生活を崩さないため、善意で秘密を守っているんだという気持ちを大事にしながら演じました」。

「ノスタルジックな思い出が盛り込まれている、岩井俊二監督の『花とアリス』は大好きです」

【写真を見る】岩井俊二監督の『花とアリス』が大好きだというウォン・ジナ
【写真を見る】岩井俊二監督の『花とアリス』が大好きだというウォン・ジナ[c]2025 SOLAIRE PARTNERS LLC & HIVE MEDIA CORP ALL RIGHTS RESERVED

映画のなかのジョンアとは違い、学生時代は明るく、いたずらっ子な面もあったというウォン・ジナ。インタビューをしていても、好奇心旺盛で、挑戦を恐れない性格であることが伝わってくる。『シークレット・メロディ』では、まったく経験のなかったピアノ演奏にもトライ。撮影時には、連弾シーンもあったユジュン役のド・ギョンスが“同志”のように支えてくれたという。

「もともとピアノは弾けず、楽譜も読めませんでした。それなのに弾かなければならない曲の難易度が高かったので、楽譜に指の番号を全部書いていただき、繰り返し練習しました。ギョンスさんについては、同年代の俳優ということもあって、普段から出演作を見ながら『演技が本当に上手だなあ。歌、ダンス、演技と、いろんな才能がある人だな』と思っていました。今回、共演してみて感じたのは、実力はもちろんですが、現場にいるときに周りの人たちとすごくなじんで、なにもせずただそばにいるだけでリラックスさせてくれる存在だということでした。共演者への配慮も細やかで。そんなギョンスさんだからこそ、彼の演技や出演作がとても魅力的に見え、印象深く心に残っていたんだなと思いました。グルメなので、美味しいお店についてもいろいろ教えてくれました」。

リスト、ラフマニノフ、ショパン、シューマンら数多くのクラシックの名曲が物語を彩る
リスト、ラフマニノフ、ショパン、シューマンら数多くのクラシックの名曲が物語を彩る[c]2025 SOLAIRE PARTNERS LLC & HIVE MEDIA CORP ALL RIGHTS RESERVED

ノスタルジックな雰囲気の漂うラブストーリーのヒロインをさわやかに演じたウォン・ジナ。普段はどんな映画を観ているのだろうか。

「ジャンルを問わず、好きな作品はいろいろあるんですが、繰り返して観る映画には、ノスタルジックな思い出が盛り込まれている、という共通点があるような気がします。岩井俊二監督の『花とアリス』も大好きです。あの年代にしかない初々しい感性とか嫉妬心とか、そういったものがストレートに感じられるので。ラブストーリーでは『ノッティングヒルの恋人』を繰り返し見ています。今でも1年に1、2回は見ます。自分が演じると考えると、SFもやってみたいなと思っています。そういったジャンルの作品を撮影するときはどんな技術を使うのか、演じるうえでどんなスキルが必要なのか、ということに関心を持っています。この映画はラブストーリーの要素がたくさんあるファンタジーなので、感情と旋律に乗って心で感じられるような映画として見ていただけたら、と願っています」。


取材・文/佐藤 結


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