『近畿地方のある場所について』『IT』など、近年の大ヒットホラーの傾向は?注目作『カラダ探し THE LAST NIGHT』のポジションを考察!
ケータイ小説から誕生し、コミック化に続いてセンセーションを巻き起こした2022年のスマッシュッヒットホラー『カラダ探し』。シリーズ最新作となる『カラダ探し THE LAST NIGHT』が9月5日(金)に公開される。前作を観た方であれば、あの衝撃のエンディングから主人公の明日香(橋本環奈)がどうなってしまったのか?気になっていたに違いない。そういう意味でも、期待が高まる一作だ。
前作『カラダ探し』は同年公開のホラー作品において興行収入No.1のヒットを記録した。とりわけ、10代、20代を中心とした若い観客の熱烈な支持を受けている。舞台は、惨殺された少女のバラバラになったカラダが隠されている高校の校舎。そこに通う6人の生徒にカラダのパーツすべてを見つけだすというミッションが課せられる。幼い少女の姿をした“赤い人”に全員が殺されたら、時間がループしてもう一度やり直し。つまり6人は、カラダをすべて見つけるまで同じ一日を何度も何度も繰り返すことになる。そんな独特の設定も、ヒットの要因となった。
多彩な切り口で作られ続けるホラー作品たち
ホラーは昔もいまも人気ジャンルで、近年も多くのヒット作が生まれている。しかし、ひと口にホラーと言っても、恐怖の種類や切り口は様々だ。シリアルキラーの凶行、ゾンビの暴走、幽霊の祟りがある一方で、血みどろもあれば、緊迫感ある演出で心理的に揺さぶりをかけてくるもの、さらに無血の静謐な怖さもある。そのような広いジャンル体系のなかで、ホラーの作り手たちは作品の立ち位置を模索する。ならば、『カラダ探し』はどのポジションに位置しているのか?ざっくりとではあるが、マトリクス図で近年のヒットホラーを俯瞰してみよう。
先にも述べたようにホラー映画における恐怖にはいろいろなものがあるが、ここではジャンプスケアに代表される瞬間的に“びっくりする怖さ”と、じっとりジワジワと迫り来るような“ゾッとする怖さ”に分けて縦軸を設定。これらが両立する作品も存在するが、作品全体の雰囲気を見て配置している。そして、“動”的なゲーム性やアクション系ホラーと、“静”的なミステリー&サスペンス系ホラーを対にして横軸に設定している。このように大局的に見るだけでも、ホラー映画の多彩さが十分におわかりいただけるだろう。
人間の恐ろしさや恐怖の心霊現象を描くサスペンス色が強いホラー
例えば、昨年ヒットした『映画版 変な家』(24)は、奇妙な間取りの家にまつわるミステリーに端を発し、そこからサスペンスに発展して、人間の狂信という恐怖の要素に着地する。アリ・アスター監督の問題作『ミッドサマー』(19)もこれに近い。いずれもオカルトの要素は希薄。怖いのは、超常現象でも幽霊でもモンスターでもなく、非人道的な信仰に入れあげる人間だ。そんな現実がスリリングに浮かび上がってくる。
一方、SNSで話題になった小説を映画化した『近畿地方のある場所について』(公開中)は、失踪したオカルト雑誌編集長が集めていた都市伝説やネット怪談を、主人公たちが調査するというスタイル。モキュメンタリー作品を数多く手掛けてきた白石晃士監督によるリアリティを追求した記録映像が、観る者を得体の知れない恐怖へと導いていく。
Jホラーはサスペンス色の強い作品が多いが、『あのコはだぁれ?』(24)や『サユリ』(24)も同様。ただし、ここで描かれる恐怖の対象は人間ではなく霊的な現象。つまりオカルト色が強いということだ。女性の生前の姿を借りた霊の描写はジャンプスケアの要素が強く、その出現シーンにどっきりさせられる人も少なくないだろう。直近の作品でいえば、娘を亡くした家族がいわくつきの人形に翻弄されていく『ドールハウス』(25)もここに分類できそうだ。