「点と点がつながる瞬間が気持ちいい」…『近畿地方のある場所について』の何度も観たくなる“求心力”に感想コメントから迫る
『カラダ探し』(22)、『映画版 変な家』(24)が大ヒットするなど再びホラーが盛り上がっている。そんなムーブメントの新たな担い手となりそうなのが現在公開中の『近畿地方のある場所について』だ。原作はホラー作家、背筋によるSNSで注目された同名小説で、監督を『貞子vs伽椰子』(16)、『サユリ』(24)の白石晃士が務め、主演に菅野美穂と赤楚衛二がキャスティングされている。
8月8日から11日の初週4日間で興行収入4.4億円と、見事に”4”が並んだ本作らしい大ヒットを記録。2025年に公開のホラー映画オープニング成績(初週3日間)としては、動員&興行収入で第1位を記録する「2025年No.1ホラー映画」となり、SNS上では「今年観たホラーのなかで一番おもしろかった」、「人知を超えたものへの怖さはもちろんですが、私は人の情念や執念に怖さを感じました」、「驚いて声が出たのって初めてかもしれないです」、「日本ならではの気持ち悪い怖さがあっておもしろかった」といった感想が投稿されている。ホラーファンをはじめ、原作ファン、キャストのファン、コアな白石監督ファンを巻き込んで話題となっている本作。“なに”が人々を引きつけているのか?感想コメントをピックアップしながら探っていきたい。
都市伝説やネット怪談にまつわる資料を調べるうちに“近畿地方のある場所”に行き着く…
赤い表紙に描かれた不穏さをかき立てる山とダムが目を引く小説「近畿地方のある場所について」。もともとはWEB小説サイト、カクヨムに投稿されたのが始まりで、ルポルタージュやネット掲示板のスタイルを用いた「実在するかも」と思わせる文体が反響を呼び、瞬く間に累計2300万PVを超える大ヒットを記録。書籍化がされるとより幅広い層への関心につながり、書店でも特設コーナーが設けられるなどベストセラーとなった。
そんな注目ホラーを映像化した本作の物語は、フリーライターの瀬野千紘(菅野美穂)が「行方不明の友人を探しています」と語りかけるSNSの投稿映像から始まる。とあるオカルト雑誌の編集長が突然失踪し、編集者の小沢悠生(赤楚衛二)は代わりに特集ページを完成させねばならず、編集長が消息を絶つ直前まで集めていた資料を2人は調べ始める。それは都市伝説やネット怪談に関する週刊誌記事やワイドショーの録画、動画配信者が撮った映像といった類のもの。一見なんのつながりも持たないように思えたそれらは、どれもが“近畿地方のある場所”に通じていることが判明。そして、それらが一本の線となった時、恐ろしい事実が浮かび上がってくる。
「『この番組見たことある!』と思えてしまうクオリティの高さ」…作り込まれたアーカイブ映像の数々を原作ファンも絶賛
ホラーのなかでも、小説「近畿地方のある場所について」はモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)と呼ばれるジャンルに属する作品。ドキュメンタリーを装った手法を用いることで、フィクションを現実のものと錯覚させ、不安感や恐怖心をかき立てていく。同ジャンルでは、テレビ東京で昨年放送されたTXQ FICTIONの「イシナガキクエを探しています」が話題になったことも記憶に新しい。本作においては、原作に収録されていた怪現象に関するアーカイブの数々がどのように映像化されるのか?に期待が寄せられていたようで、原作ファンからもその部分に言及する感想が数多く上がっている。
「原作とは違うベクトルの恐怖と驚愕を実感しました」
「作り込まれた映像に不安をかき立てられるし、あ…もうダメだってなる気持ち悪い廃屋の造形もたまらない」
「ぶつ切りの資料を掻き集め、一つにつなげていく流れがわかりやすかった」
「伏線がドンドンつながっていく感じなど原作をよく再現していてよかった」
「劇中のニュース映像やニコ生、PR動画、バラエティ番組などすべてが架空であるはずなのに、『この番組見たことある!』と思えてしまうクオリティの高さに感動しました」
原作未読者からも「小説を読んでみたくなった!」との声が上がっている。「モキュメンタリー要素すごい!っていうか怖い!昼間に観てよかったです…」や「ジメッとしたホラーでミステリー要素もあり、おもしろかった!点と点がつながる感じがゾクゾクして夏にピッタリ!」、「残された記録映像が年代別に映され、それをもとに探訪していくのが楽しい」といった感想も見られるなど、このジャンルにすっかりハマってしまっていたようだ。