殺人の瞬間を捉えた映画は本当に存在する?映画で見る“スナッフフィルム”の残酷な世界
スナッフフィルムの謎めいた世界を描く作品も多数…
存在のあやふやさに目をつけ、物語の鍵を握るアイテムやエッセンスとしてスナッフフィルムを描いた作品も数知れず。その代表格といえば、ジョエル・シュマッカー監督の『8mm』(99)。少女を殺害する様子を収めたビデオの真偽を調べてほしいとの依頼を受けた私立探偵の主人公トム(ニコラス・ケイジ)が、ビデオショップ店員のマックス(ホアキン・フェニックス)の協力のもと、残虐ポルノの世界に足を踏み入れていくサスペンスだ。
はたして映像は本物なのか?その出どころは?ビデオの裏側にある真実とは?スリリングな物語や裏社会の描写など、蠱惑的な雰囲気にどこか心惹かれてしまう。
スナッフフィルムの世界に心奪われていく様子を描いた作品として、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ヴィデオドローム』(83)も忘れてはいけない。ローカルケーブルテレビ局の社長マックス(ジェームズ・ウッズ)が、特に筋書きのない拷問、殺人といったスナッフフィルムの映像を流す海賊番組“ヴィデオドローム”の存在を知り、しだいに取り憑かれていく様を描く。
誰が、なんのために、番組を放送しているのか、すべてが謎に包まれたヴィデオドロームのグレーでミステリアスな存在感や、映像によって現実と幻想の間で自分を見失っていく狂乱まで、スナッフフィルムのいかがわしさが鮮やかに表現されている。
また、スコット・デリクソン監督の『フッテージ』(12)は、スランプ気味のノンフィクション作家エリソン(イーサン・ホーク)が、一家惨殺事件現場という曰く付きの一軒家に引っ越し、その事件を調べることで再起を図るが、不可解な恐怖に巻き込まれてしまうホラー。
エリソンが屋根裏で見つけたのが、5本の8mmフィルムと映写機。それぞれに絞首刑をはじめ、恐ろしい一家殺害の映像が残され、粒子の荒い映像はどこかリアリティがあり、作り物とわかっていてもゾッとしてしまう。
切っても切れない?連続殺人鬼とスナッフフィルム
マンソンファミリーの一件からスナッフフィルムの噂が広まったように、連続殺人鬼とスナッフフィルムは結びつけられて考えられることもしばしば。300人以上を殺害したヘンリー・リー・ルーカスもスナッフフィルムへの関与が疑われている。
マイケル・ルーカー演じるこのシリアルキラーの生活を描いた『ヘンリー』(86)は、ヘンリーの犯行シーンの淡々とした雰囲気がスナッフフィルムを彷彿とさせる。また、ヘンリーが質屋で奪ったビデオカメラで撮影した犯行映像もテレビを通じて映しだされ、その生々しさがなんとも恐ろしい。