殺人の瞬間を捉えた映画は本当に存在する?映画で見る“スナッフフィルム”の残酷な世界
もしもスナッフフィルムの現場に遭遇してしまったら…
スナッフフィルムの現場の地獄絵図を描くパターンもおなじみ。『セルビアン・フィルム』(10)は経済的に困窮した元ポルノスターの男性が、家族のために高額なギャラに釣られて仕事復帰したら、なんとスナッフフィルムの現場だった!というもの。壮絶なゴアと共に描かれる主人公の地獄の体験は、その過激さゆえに46か国以上で上映禁止になった。
このたびデジタルリマスター版としてリバイバル公開された『ミュート・ウィットネス』も、スナッフフィルムの現場を目撃してしまったら…という“現場もの”。
特殊メイクアップアーティストのビリー(マリーナ・スディナ)は、姉の恋人が監督するホラー映画の撮影のためにモスクワのスタジオを訪れたが、ある日の撮影後、忘れ物を取りに戻った際に施錠されスタジオに閉じ込められてしまう。助けを求めてスタジオを彷徨うなか、ポルノの撮影に出くわしたと思いきや、直後、女性の胸にナイフが突き立てられる瞬間を目撃してしまい、バレないようにその場から立ち去るのだが…。
犯行を目撃者した女性が体験する地獄の一夜を描いた本作。殺人の撮影がはたして本当だったのか?ニューロティックな要素も含まれており、真偽が定かでないスナッフフィルムの都市伝説的な側面を抑えたストーリーはお見事。声が出せないという設定が生みだすスリリングでもどかしい展開や、ヒッチコックやデ・パルマを彷彿とさせるアンソニー・ウォラー監督の演出など、見応えのあるサスペンスだ。
裏社会ならではの蠱惑的なムードや真偽が定かではないからこそのいかがわしさ、過激な描写が好奇心を煽るスナッフフィルム。その世界は、安心、安全な映画の中のみに留まっていてほしいものだ。
文/サンクレイオ翼
作品情報へ