Netflix史上最多視聴のアニメーション映画に!『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』、グローバル人気の理由は?
今作の視聴パターンは特殊で、配信開始以降減少するのではなく、週を追うごとに勢いを増している。第5週目には2580万回のNetflix史上最大の単週視聴回数を記録、第5週に視聴回数が増加した史上初のNetflix映画であり、持続的な視聴エンゲージメントを実証している。Netflixがランキングを発表する全93か国でトップ10入り、米英、韓国、日本、ドイツなど41か国以上で1位、8週連続でグローバルトップ10にランクインする稀な長寿記録作品となっている。まるで実在するK-POPアーティストのようなHUNTR/Xのマーチャンダイズや虎のぬいぐるみなどが人気を集め、Netflixが運営するオフィシャルグッズのオンラインストアの売上が400%アップを記録したという。
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の大ヒットの重要な点は、IP原作や続編でなく、完全なるオリジナルのPG(Parental Guidance Suggested, 保護者の判断によって年齢制限なく鑑賞可能)作品だということ。コロナ禍復興期以降、北米興行では『マインクラフト/ザ・ムービー』(25)、『リロ&スティッチ』(24)、『ヒックとドラゴン』(25)といったPG作品のヒットが続いている。劇場公開では家族連れが訪れること、配信では子どもたちが繰り返し観るためヒットしやすい傾向がある。ホラーなどのジャンル映画がヒットする一方で、子どもを連れて安心して観られる映画の重要性が再認識されている。『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』配信開始後はK-POPファンやKコンテンツファンから火がつき、K-POPアーティストたちがSNSでダンスチャレンジや推奨動画をあげたことで広がりを見せ、楽曲がバイラルになり世代を超えた人気を博したと分析できる。
これらの大記録をもとに、来年3月の第98回アカデミー賞ノミネートにも期待が寄せられている。KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』は8月後半に北米複数都市でシンガロング上映(応援上映)を実施し、キャンペーンに弾みをつける。この人気が秋以降も持続すると、歌曲賞だけでなく長編アニメーション賞ノミネートも期待できるかもしれない。長編アニメーション賞の下馬評には、ディズニーが年末に公開する『ズートピア2』(12月5日公開)、A24が英語吹替版を劇場公開する『ナタ 魔童の大暴れ』(25)、細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』(11月21日公開)などがあがっているが、今年は大本命がない。以前はディズニー/ピクサー作品が圧倒的な強さを誇っていたが、米国外投票者が増えメンバーが若齢化した近年は様子が変わってきている。2023年はNetflix『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』、2024年はスタジオジブリの『君たちはどう生きるか』、2025年はJanus Filmsの『Flow』と、海外作品や独立系作品が受賞する傾向が続いている。『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』はどこまで記録を伸ばすことができるか、Netflixも予想していなかったというサプライズヒット作品に注目が集まっている。
文/平井伊都子