『雪風 YUKIKAZE』初共演の竹野内豊×玉木宏が対談。「死に行くことを美徳とせず、“命を繋げる”ことが大きなテーマ」
「“なにがあっても生き抜く、命を繋げる”ということが大きなテーマ」(竹野内)
――これまでの戦争映画は「誰かを護るために戦って死ぬ」といったニュアンスのものが多かったような気がするのですが、本作ではそうではない、「誰かを護るために生きなければならない」というメッセージが鮮烈でした。
竹野内「この物語の背景には“武士道”の精神が作品全体を通じて描かれていると思います。軍人が戦地で勇敢に戦う姿を主軸とするのではなく、『どんなことがあっても必ず生きて帰る、生きて還す、命を繋げていく』という根底にあるテーマは、ほかの戦争映画ではあまりないような気がします。それだけに、戦後80年のこのタイミングで多くの方々に観ていただくというのは、とても意味のあることなのかなと思っています」
玉木「戦争という背景はありますが、同時にエンタテインメント作品ですし、どんな時代のどんな状況にも置き換えられる『生きろ!』というメッセージをやはりいまに伝えたいという気持ちが強かったですね。だから負傷した井上をビンタしながら『寝るな!起きろ!しっかりしろ!』と檄を飛ばす冒頭のシーンから力が入りましたし、それは、困っている人がいたら手を差し伸べる、助けるという非常にシンプルな行動だと思います」
――繰り返しになりますが、その「生きろ!」というメッセージを、幾つもの自然災害やコロナ禍を経たこのタイミングで強く訴えることに、お2人はどんな意味があるとお考えですか?
竹野内「私たちは戦争を実際に体験した方々から直接お話を聞けることも徐々にできなくなってきて、戦争というものに対する現実味も薄れていくなかで、生涯をかけて、命の尊さと平和を伝え続けてくださった方々からバトンを受け取る時期に差し掛かっていると思うんです。歴史を知識として勉強するのではなく、映画のなかで、当時を懸命に生きた人々の心情を一緒に体感することで、あの時代に起こっていた真実を、情景として人々の記憶に深く残せるのではないかと。今回の『雪風 YUKIKAZE』は死に行くことを美徳とするのではなく、“なにがあっても生き抜く、命を繋げる”ということを大きなテーマとして掲げているので、そのような作品を届ける意味はすごく大きいと思っています」
玉木「戦争を知っている方は確かに少なくなっているんですけど、戦後80年という節目に公開されるこの映画が、戦争をもう一度考えるきっかけになってくれたら、作った意味があると思います。竹野内さんがいまおっしゃったように、死に行くことは美学ではない。いまの時代にあったメッセージはやはり“生きる”ということだし、命はどんなことがあっても繋いでいかなければいけない。実は僕の祖父も戦争に行って、シベリアで2年半抑留されていたんです。本人は多くを語りたがらなかったので、戦地の話を聞くことはなかったですが、祖父が生きて帰ってきてくれなければ僕は当然いないわけだし、親になった僕もその繋いでくれた命を、子どもたちに繋いでいく責任を感じています。そういった意味でも、本作のメッセージはきっと多くの人たちの心に届くと信じています」
取材・文/イソガイマサト