• 映画TOP
  • 映画ニュース・読みもの
  • NANA
  • 俊英クリエイターの演出や脚本、ヒロイン、主題歌…公開から20年を経た『NANA』『リンダ リンダ リンダ』『サマータイムマシン・ブルース』『亀は意外と速く泳ぐ』はなぜ今も心に響くのか?
俊英クリエイターの演出や脚本、ヒロイン、主題歌…公開から20年を経た『NANA』『リンダ リンダ リンダ』『サマータイムマシン・ブルース』『亀は意外と速く泳ぐ』はなぜ今も心に響くのか?

俊英クリエイターの演出や脚本、ヒロイン、主題歌…公開から20年を経た『NANA』『リンダ リンダ リンダ』『サマータイムマシン・ブルース』『亀は意外と速く泳ぐ』はなぜ今も心に響くのか?

もしも、もしもである。奇跡的にタイムマシンが完成し、実用化したならば、筆者は「2005年を経験したばかりの過去の自分」の前に現れて、にわかに信じないのも想定しつつ次のことを教えてやりたい。
「あのさ、2005年は教皇ヨハネ・パウロ2世が亡くなってコンクラーベが実施されたでしょ。2025年はね、また後継選びが行われ、偶然にも『教皇選挙』(24)という映画が日本でも公開されて、大ヒットするよ!」。
で、戸惑う自分に向かって、傍らのタイムマシンを誇らしげにさすりながらついでに、こう教えてやるのだ。
「映画といえば、『サマータイムマシン・ブルース』って作品が話題を集めたと思うんだが、同じく2005年を代表する『NANA』『亀は意外と速く泳ぐ』『リンダ リンダ リンダ』といった逸品が2025年、20周年アニバーサリーでスクリーンに帰ってくるぞ」。

――というわけで、これを単なる“時の巡り合わせ”と言っては身も蓋もない。いつか可能になるかもしれぬ、(過去の自分にマウントを取る!)タイムマシンコントの“妄想”ネタポイントを押さえながら、上記の4作を紹介してみたい。

ナナ演じる中島美嘉の主題歌も大ヒットした『NANA』

【写真を見る】中島美嘉、松田龍平らによる原作漫画に忠実なビジュアルも話題になった『NANA』
【写真を見る】中島美嘉、松田龍平らによる原作漫画に忠実なビジュアルも話題になった『NANA』[c]2005「NANA」製作委員会

まず7月、初のデジタル版リバイバルとして先鋒を切ったのは2005年度の実写邦画観客動員数第2位、興行収入40億円超えの大ヒットとなった大谷健太郎監督の『NANA』だ。一見正反対に見える二人のNANA。カリスマ性を持ち、メジャーデビューを目指すバンドのボーカリスト「大崎ナナ」を歌手の中島美嘉、ごくごく平凡で恋が最優先の「小松奈々」に宮崎あおいが扮してダブル主演。その出会いから東京での同居、恋と友情、夢と現実などが全盛りで綴られてゆく。ちなみに矢沢あいの原作、コミックス第1巻の発売は2000年5月で、2009年から無期限休載中だが今年25周年を迎えた。

何と言っても中島美嘉の主題歌「GLAMOROUS SKY」、(ライバル役で出演もした)伊藤由奈の劇中歌「ENDLESS STORY」がすばらしいのだが、タイムマシンネタとしては、中島美嘉が今年初めに韓国の音楽番組に初登場し、ついにあの「雪の華」を歌ったこと。2004年の韓国ドラマ「ごめん、愛してる」の挿入歌としてパク・ヒョシンにカバーされて以来、長年親しまれてきた。そもそも『NANA』はアジア圏でもヒットしており、今年の韓国・ソウルを含む6都市アジアツアーでは「雪の華」とあわせて、「GLAMOROUS SKY」も披露されたのを押さえるべきだろう。

『NANA』デジタル版は渋谷ホワイトシネクイントで上映中
『NANA』デジタル版は渋谷ホワイトシネクイントで上映中[c]2005「NANA」製作委員会

それから、宮崎あおいについて。筆者が当時取材した際、「あそこまでメイクをしてお芝居をしたことがなかった」とコメントしていたが、確かに従来、アートハウス系の映画のミューズであった彼女のターニングポイント作に。これからまた、転機になるであろう10月公開のまさかの実写映画『秒速5センチメートル』(監督:奥山由之)が控えているので、ここは2005年だけではなく新海誠のオリジナルアニメが封切られた2007年にもタイムマシンを飛ばしたいところ(←繰り返しますがあくまで妄想です)。

劇作家・上田誠の名を世に知らしめた『サマータイムマシン・ブルース』

『サマータイムマシン・ブルース』デジタル版は渋谷シネクイントで上映中
『サマータイムマシン・ブルース』デジタル版は渋谷シネクイントで上映中[c]2005 サマータイムマシン・ブルース製作委員会

次に8月に入っての一番手、初のデジタル版でスクリーンに蘇った本広克行監督の『サマータイムマシン・ブルース』を。大学のSF研究会部員たちが、「今日」と「昨日」をめまぐるしく往復する1day青春タイムリープSFコメディである。炎天下の夏休み、部室のクーラーのリモコンが壊れ、うだる中、そこに突然、タイムマシンが出現!そいつに乗り込み、壊れる前のリモコンを取りに行こうと「昨日」へ戻るや、次々とトラブルが巻き起こる。


ヒロインは上野樹里だ。かつての取材で筆者が感心したのは、「タイトルの中でいえば、私は“ブルース”担当なのかも。瑛太さん演じる同級生の甲本のことを、ほのかに想っている女の子なんです」とさすがの着目点。現在フルネームで活動する永山瑛太の初主演映画で、上野は甲本に惹かれるカメラクラブの部員・柴田役だった。そのクラブ友達、メガネ着用の真木よう子にも目を奪われ、彼女が甲本と“ある秘密”を誓い合うのが胸熱でイイのだ。

瑛太(永山瑛太)演じる甲本は今日と昨日を行き来する
瑛太(永山瑛太)演じる甲本は今日と昨日を行き来する[c]2005 サマータイムマシン・ブルース製作委員会

原作は、上田誠代表の「ヨーロッパ企画」の同名舞台。出身地である香川県をロケ池に選んだ本広監督は、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 』(03)がメガヒット、さらに2005年はスピンオフ『交渉人 真下正義』も。『踊る2』に捜査員役で出ていた佐々木蔵之介に薦められ、東京・下北沢の駅前劇場で舞台を観て、即座に映画化を決意し、作・演出を務めていた若き上田に脚本を依頼。近年隆盛のタイムリープものの源流にして、それを定期的に支える彼の初の映画化作品である。本作での妄想タイムマシンネタはずばり、上田誠が今年も変則タイムリープものに関わって脚色を受け持ち、映画『リライト』(監督:松居大悟)が発表されたこと。長きに渡る活躍を伝えれば、2005年の人たちは驚くはず!

関連作品