声優陣の名演が光る『劇場版「鬼滅の刃」』を櫻井孝宏が振り返る「冨岡義勇役との出逢いは僥倖という言葉に尽きる」
「花江くんとは、ノンバーバルコミュニケーションで戦った」
今作は、櫻井が演じる義勇にとっても大切な出来事が描かれる。テレビアニメ「竈門炭治郎 立志編」第一話で鬼に家族を殺された炭治郎に対し、義勇は「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」と言い、炭治郎を鬼殺隊へ導くきっかけとなった。そして「柱稽古編」では炭治郎の言葉によって、今度は義勇が心を救われる場面があった。そうやって歴史を積み重ねてきた2人が、強さに執着を持つ鬼、猗窩座を前に共闘を果たすのだ。
劇中で新たな表情を見せる義勇について、櫻井は「『自分は柱ではない』と自縄自縛になっていた義勇が炭治郎に救われ、彼と共闘を果たして猗窩座に立ち向かっていく。柱として戦う中で、覚醒するような、研ぎ澄まされていくような感覚を味わう。義勇が戦いのなかで強くなっていく瞬間を見られたことには、胸に熱いものが込み上げた」としみじみ。
義勇が背中を預けられるまでに成長した炭治郎の姿にも感無量の面持ちを見せた櫻井だが、今回の戦いを通して2人の間にある絆を実感したという。「冨岡と炭治郎は、兄弟弟子の関係性」という櫻井は、「2人で水の呼吸を駆使して戦うシーンもすばらしかったです。2人ならではのアクションだなと思いました。炭治郎は自分と呼応するように動く義勇に驚きますが、それは義勇も同じで。戦いにおける2人は、まるで達人同士の会話をしているよう。説明をしなくても“あうんの呼吸”で動けるのが、彼らが特別な関係にある証拠」だと語る。
ぴったりと息を合わせて戦う2人を演じる上では、アフレコにおいて炭治郎役の花江夏樹とどのようなやり取りがあったのだろうか。
「花江くんとは事前に話し合ったり、特に示し合わせるということはなく、ノンバーバルコミュニケーションのようなものがありました。花江くんはこれまで、炭治郎のはらんでいる可能性をしっかりと築き上げてきた。僕はそのお芝居から、たくさんのものを引き出していただきました」と劇中と重なるような共鳴があった様子。本シリーズの座長である花江からは、刺激を受けることが「たくさんある」という。「第一話のお芝居から、すごいなと思わせられていました。本作では、炭治郎が猗窩座と対峙した時の演技が一色ではなかったですよね。炭治郎の実年齢感や煉獄さんへの想い、そこから来る猗窩座への怒りなど、あらゆるものすべてが詰まっていた。すばらしいなと思います」。
「石田さんに対して、ずっと見上げるような気持ちでいます」
本作の公開記念舞台挨拶では、花江と櫻井が「すばらしい」と猗窩座役の石田彰の芝居について舌を巻くひと幕があった。櫻井は、「炭治郎が義勇に対して『すごい』という目で見ているように、アフレコでは櫻井孝宏が石田彰を『すごい』という目で見ていました」と笑顔。
「石田さんに対して、『すごい』『すばらしい』という言葉をためらいなく言えます。もう何年も前からほかの作品でもご一緒させていただいていますが、石田さんはずっとすごい。僕はいつも見上げるような気持ちで石田さんを見ていて、それはいまでも変わりません」と並々ならぬ尊敬の念を打ち明ける。
「石田さんは、芝居に入る手前の段階となる、キャラクターの可能性の作り方がとても豊か。キャラクターの魅力や個性を限界まで広げて、表現することができる。抽象的ではありますが、猗窩座というキャラクターからはみ出ていないのに、幅を広げるような感覚で作ると言いますか。だからこそ石田さんでなければ形作れないような役になっている」と。加えて「猗窩座のどアップが本作の第2弾キービジュアルになっていて、ポスターなどに書かれているキャッチコピー『宴の時間だ』という言葉も、猗窩座が口にしたもの。それができるくらい、猗窩座というキャラクターも、そして童磨や獪岳も、とてもステキなキャラクターですよね」と鬼にも心を奪われてしまうのが、本シリーズの特徴だと話す。