河瀨直美監督最新作『たしかにあった幻』ロカルノ国際映画祭のクロージングに決定!劇場公開は2026年2月

河瀨直美監督最新作『たしかにあった幻』ロカルノ国際映画祭のクロージングに決定!劇場公開は2026年2月

『あん』(15)、『朝が来る』(20)の河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』が第78回ロカルノ国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門にクロージング作品として正式招待されることが決定。また、2026年2月に劇場公開されることも明らかとなった。

長編第二作『火垂』(00)で第53回ロカルノ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。それ以来、第54回には『きゃからばあ』(01)がコンペティション部門に招待され、第65回では河瀨監督のパーソナル・ドキュメンタリー5作品(『塵』『垂乳女』『きゃからばあ』『かたつもり』『につつまれて』)をオマージュ上映、河瀨監督がプロデュースしたドキュメンタリー『祈‑Inori‑』(12)が新鋭監督部門グランプリを受賞するなど、河瀨監督の才能、眼差しと共鳴し、その国際的評価の礎の一つとなってきたロカルノの地で、現地時間8月15日(金)にワールドプレミアが実現する。

ロカルノ国際映画祭との縁が深い河瀨直美監督
ロカルノ国際映画祭との縁が深い河瀨直美監督[c]Leslie Kee

『たしかにあった幻』は小児臓器移植実施施設を舞台に、命の灯を照らす「愛」の物語。フランスからやって来たレシピエント移植コーディネーターのコリーが、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女とその家族とかかわりながら、命の尊さと向き合う。同時に、突然失踪した恋人の行方を追うコリーの姿を通じて、愛と喪失、希望も描いていく。

これまで『あん』ではハンセン病を抱える女性、『光』(17)では視力を失っていく男性、『朝が来る』では特別養子縁組の夫婦を取り上げ、社会的偏見や喪失の中で、他者との関係性を通して救われる「愛のかたち」を描いてきた河瀨監督。本作でも、深い人間ドラマを通じて命と愛の意味を問いかける。

撮影期間は2024年6月から11月。兵庫、大阪、奈良、岐阜、屋久島、パリとロケーションを転々としながら実施された。小児臓器移植に携わる実際の医療関係者たちが、現在の日本が抱える臓器移植の問題点をディスカッションするシーンや、移植手術シーンなどはドキュメントとして撮影され、それをドラマの中に巧みに取り込むことによって物語にリアリティと臨場感を持たせている。

小児臓器移植実施施設を舞台に命の灯を照らす「愛」の物語を描く『たしかにあった幻』
小児臓器移植実施施設を舞台に命の灯を照らす「愛」の物語を描く『たしかにあった幻』[c] CINÉFRANCE STUDIOS - KUMIE INC - TARANTULA - VIKTORIA PRODUCTIONS - PIO&CO - PROD LAB - MARIGNAN FILMS - 2025

主人公コリーを演じるのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督作『ファントム・スレッド』(17)への出演をきっかけに国際的な名声を獲得したヴィッキー・クリープス。臓器移植の現場で命と向き合いながら、失踪した恋人の足跡を辿る姿は忘れることのできない印象を残す。コリーの恋人であり、突然失踪する迅を演じるのは、若手実力派の寛一郎。静謐な演技の中に宿した鋭さに、誰もが心を奪われるだろう。

【写真を見る】『たしかにあった幻』に出演するヴィッキー・クリープス、寛一郎
【写真を見る】『たしかにあった幻』に出演するヴィッキー・クリープス、寛一郎[c] CINÉFRANCE STUDIOS - KUMIE INC - TARANTULA - VIKTORIA PRODUCTIONS - PIO&CO - PROD LAB - MARIGNAN FILMS - 2025

河瀨監督の描いてきた「愛のかたち」は、他者とかかわり続けることへの根源的な問いかけでもある。その真摯な追求の姿勢が引き寄せた普遍、リアリティと叙情が奇跡的に同居する『たしかにあった幻』は、河瀨映画の一つの到達点となる。


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