『星つなぎのエリオ』が“おばさんと甥っ子”の関係を描いたワケとは?監督&プロデューサーが教える制作秘話
ディズニー&ピクサーの最新作として、現在公開中の『星つなぎのエリオ』。タイトルが示すように、星々の世界を舞台に描かれる本作。主人公は両親を亡くした孤独な少年エリオで、自分の居場所を探し求め、「いつか遠い星へ行ってみたい」という強い願いが、思わぬかたちで叶ってしまう。星々の代表が集まる“コミュニバース”に迎え入れられたエリオが、エイリアンの少年グロードンと絆を育み、コミュニバースの危機に立ち向かうストーリーが、ディズニー&ピクサーらしい“映画のマジック”で展開し、あらゆる世代を夢中にさせる。
共同監督を務めたマデリン・シャラフィアン(『リメンバー・ミー』のストーリーアーティスト)とドミー・シー(『私ときどきレッサーパンダ』の監督)、そしてプロデューサーのメアリー・アリス・ドラムに、作品に託した想いや、宇宙を舞台にした世界観やビジュアルのこだわりなどを聞いた。
「おばさんと甥っ子は映画としてはユニークな関係で、ストーリーが予定調和にならないと思った」(ドミー・シー)
そもそも作品の“始まり”は何だったのか?ディズニー&ピクサー作品は、常に見たことのない世界へ連れて行ってくれるだけに、アイデアの根源が気になる。『星つなぎのエリオ』の場合、「宇宙」を描きたかったのか。それともキャラクターやテーマから発生したのか。ドミー・シー監督は次のように振り返る。
「キャラクターですね。エイドリアン・モリーナ(もう一人の共同監督)の父親がアメリカ軍の歯医者で、彼は基地で育ったのですが、アートが好きだったために、どこか居場所のなさを感じていたそうです。そこがエリオのキャラクターに反映されました。その後、私とマデリンが監督に加わった際に、『もしこうだったら?』というアイデアをいろいろ出し、『主人公がエイリアンにさらわれることを望んでいる』という設定が生まれたのです。本作はSFで、一種の誘拐モノですが、過去の映画とは異なるヒネリを入れて物語を完成させました。軸となったのが、エリオが地球上で向き合った葛藤で、そう考えれば“キャラクターありき”の作品と言えます」。
そのヒネリという意味で、エリオの家族関係が独創的だ。ディズニー&ピクサーに限らず、家族の絆が描かれる作品は数多いが、本作の場合、エリオはおばさんのオルガと生活している。エリオは11歳だが、すでに両親を亡くし、オルガが親代わり。孤独なエリオは宇宙との交信が唯一の楽しみで、一方のオルガはアメリカ空軍で働きつつ、エリオの面倒を見るために宇宙飛行士の夢を断念した。そんな2人の関係を描いた理由を、ドミー・シー監督は次のように説明する。
「おばさんと甥っ子は映画としてはユニークな関係で、ストーリーが予定調和にならないと思ったのです。実の母親であればエリオは彼女の元に絶対に戻るでしょうが、相手がおばさんだったら迷うかもしれない。『私ときどきレッサーパンダ』での経験を活かし、そんな2人の関係性を描きました。つまり、それぞれに主張があり、遠慮なく口論してしまうこと。そして、相手を理解できなくてフラストレーションが溜まってしまうこと。映画を観る人は、両者に共感し、仲良くなってほしいと感じるはず。2人の壊れた絆が、宇宙へ旅することで解決するわけです」