Jホラーの“原点”、Vシネマ版『呪怨』『呪怨2』のキャストが25年ぶりに大集合!撮影現場で起きた奇怪な出来事とは?
20世紀の終わりにビデオパッケージ映画としてひっそりとリリースされ、「リング」シリーズと並んでJホラーブームを牽引していくことになったVシネマ版『呪怨』(00)、『呪怨2』(00)が、制作から25年の時を経て、4K版として初めて正式に劇場公開。それに先駆けて7月27日、新宿バルト9にて「呪!25周年 トシオくん生誕祭『呪怨〈4K:Vシネマ版〉』舞台挨拶付先行上映」が開催。清水崇監督を筆頭に、柳憂怜、藤貴子、大家由祐子、三輪ひとみ、三輪明日美、松山鷹志、吉行由実、藤井かほりらキャスト陣が25年ぶりに一堂に会した。
この日上映されたVシネマ版『呪怨』は、小学校教師の小林俊介(柳)が不登校の生徒の佐伯俊雄(小山僚太)の家庭訪問に訪れることから始まる。俊雄の母の伽椰子(藤)は小林の大学時代の同級生。俊雄しかいない佐伯家で彼は、異常ともいえる小林への想いが綴られた伽椰子の日記を目にしてしまう。時は移り、かつて佐伯家が住んでいた家で暮らす村上家の長女・柑奈(三輪明日美)は、従姉の由紀に家庭教師をしてもらっていた。しかし用事を思い出して学校へと向かう柑奈。一人残された由紀は、その家でただならぬ気配を感じることに。
まずは第1作のキャストである柳と三輪姉妹、村上家の母・典子役の吉行、そして清水監督の5名でトークがスタート。制作から25年経って4K化されて劇場公開されることに明日美が「すごい!としか言いようがない」と興奮すると、柳は「25年ってすごいよ。自分はいま62歳だけど、25年前62歳だった人はいま生きていない。それだけ相当にすごいということ」としみじみ。そんな柳の奇妙な喩えに、清水監督は「生きてるだろ!江戸時代の話かよ」とすかさずツッコミを入れる。
さらに明日美が「25年ぶりに観るとCGがチープ…」と指摘すると、清水監督は「予算がなくて…」と懐事情を暴露。「私の顎がないシーンの撮影では、監督から『動くな』と言われて動かないようにしたいのに、体が勝手に揺れ動いた」と回想する明日美。ひとみは「(明日美が)『家が呪われている!』とか言って、ぐわんぐわんと上半身を動かしていた」と明かし、明日美は「動きが止まらず、汗も出てくるし、監督からは『なぜ止まれないんだ!?』と怒られるし。結局二人がかりで体を押さえてもらって撮影していただきました」と奇怪な体験を振り返った。
そして柳が「『呪怨』がなかったら僕はいまここに間違いなくいない。『呪怨』のおかげで俳優業を続けられている」と作品への思い入れの強さを明かすと、吉行も「これまで3回くらい外国の方に『呪怨』出てますよね?と声をかけられました」と話し、ひとみも「私もいまだに言われます」と頷く。清水監督は「9日間で2本分撮らなければならず、現場はぐちゃぐちゃでした。それが25年後にまさかこんなことになるとは思ってもいなかった。俳優の皆さんもよく理解して出演してくれたものだと思います」と感謝の言葉を述べた。
続いて『呪怨2』から、伽椰子役の藤と、鈴木響子役の大家、佐伯剛雄役の松山、北田良美役の藤井がトークに参加。藤井が「笑いが絶えなくて楽しい現場でした。若かった清水監督をいじったり、その後も皆さんとは仲が良くて定期的に会ったりしていました」と撮影現場を振り返り、大家は当時BOX東中野(現在のポレポレ東中野)で行われた特別上映時のエピソードを披露。「監督が携帯をマナーモードにしていなくて、上映前に『あああ…』という俊雄くんの声が着信音で鳴り響いて。ウソでしょ?バカじゃないの?と思った」と会場の爆笑を誘う。
清水監督自らの声が使われていることで知られる俊雄くんの「あああ…」の声について松山は、「現場でオーディションをやりましたが、最終的に清水監督の声が採用されて俺たちは落ちた」と思い出し笑い。それを受けて清水監督は「ベースは俺の声ですが、皆さんの声も混ぜ合わせています」と明かし、「ハリウッド版でも使われたので、特許を取っておけばよかったと思っています」と悔しそうな表情。
そして話題は、Jホラー史に語り継がれる伽椰子の階段落ちシーンの秘話へ。「血のりを使用することから、なるべく一発でというかたちでテストをし、本番に血のりを付けてほぼ一発撮りで撮影しました」と藤が明かすと、清水監督は「羞恥心を捨ててほしかったので、僕が実演して説明して演じてもらいました」と補足。藤は「それがとても上手くて指示も細かい。再現するのは大変だったけれど、一発撮りという集中力があったから撮れました。でも腕も痛くて足にはアザができて、当時は『どうしてくれるのよ?』って思っていました」と、いまだから言える本音を吐露した。
7月27日は、劇中で俊雄の誕生日として設定されている日でもあり、奇遇にも藤と清水監督も同じ誕生日。イベント終盤にサプライズで黒いバラの花束が贈呈されると、藤は「劇場版『呪怨』の舞台挨拶も新宿で行われ、そんな思い出のある新宿で、こんなに大きい映画館でみんなと再会ができてうれしいです」とあらためて喜びを噛みしめ、清水監督も観客に感謝の言葉を述べつつ、「怖いものを観ていただいた後の空気を、『呪怨』を作った人たちが台無しにしてすみませんでした…」と平謝り。会場は大きな笑いとあたたかな拍手で包まれていた。『呪怨〈4K:Vシネマ版〉』『呪怨2〈4K:Vシネマ版〉』は8月8日(金)より公開される。
文/久保田 和馬