ヒョンビンとウ・ミンホ監督が来日インタビューで語った『ハルビン』への決意「小さなかけらが合わさって、世の中が変わる」
「目に見えないことがつながり合って現在がある」(ウ・ミンホ監督)
――今回、アン・ジュングンという人物が物語の真ん中にいながらも、周囲の人物に常に意識され、時には執着されるようなキャラクターだと思いました。監督の映画『KCIA 南山の部長たち』でも人と人の濃密な感情が世の中を動かす部分があったと思いますが、そのような部分をどう考えながら演じたり、演出したりしていましたか?
ヒョンビン「抑えながら感情を伝えることは難しかったです。同時にそのアン・ジュングンは大韓議軍の参謀中将を務めるなかで、自分の下した決定により、多くの仲間たちが犠牲になるかもしれないという恐れや悩み、苦しみというものを常に持っていたと思います。そして全身でその責任を引き受けて、信念を失わずに、一歩一歩、前に進んでいった人物だと思うんです」
ヒョンビン「私はアン・ジュングンという人は、自分自身が崩れ落ちてしまうことができなかった人物だとも思うんです。自分の中にある弱さや孤独、恐れというものを持っていたとしても、それを周りに見せてしまうと、周りの人たちの士気を落としてしまうことにもつながるだろうと考え、人知れず、深く悩んでいたんだと思います。だからこそ多くのことを隠し、一人で引き受けて過ごすしかなかったんですね。そんなふうに私は考えながら演じていたので、演技でもやはり抑えた演技になっていったでしょうし、そう表現するしかなかったように思います」
ウ・ミンホ「重要なのはアン・ジュングンがハルビンに行って計画を遂げたということは、彼一人で成し遂げたことではないということです。 多くの人々との関係性があり、そして多くの仲間たちの犠牲と献身があったからこそできたことだと思うんですね。目に見えても見えていなくても、そういったつながりがあったのだろうと思います。例えばアン・ジュングンがもし山の中で一人の捕虜を解放していなかったら、そして多くの仲間たちがそのことによって死んでいなかったら、彼があそこまで苦悩したり痛みを感じなかったかもしれないし、絶対にハルビンに行こうと決意しただろうかと思うんです」
ウ・ミンホ「現代において起こっている政治的な出来事にしても、いろんなことが積み重なった結果、起こっているわけです。どんな出来事も一夜にして起こるわけではなく、一つ一つのパズルのような、小さなかけらが合わさって、世の中を変えるようなことが起こっているんだと思うんですね。アン・ジュングンが起こしたことも、いろいろな出来事がつながった結果だと自叙伝などを読んで思ったんです。目に見えないことや一つ一つのパーツがつながって、現在があるんだと思います」
取材・文/西森路代