ヒョンビンとウ・ミンホ監督が来日インタビューで語った『ハルビン』への決意「小さなかけらが合わさって、世の中が変わる」
「アン・ジュングンが歩くシーンでは、キリストが十字架を背負うような苦しみを表現しました」(ウ・ミンホ監督)
――アン・ジュングンは高潔であり、また純粋な人物であるとも受け取れました。ヒョンビンさんは、その部分をどのように意識しながら演じられましたか?
ヒョンビン「アン・ジュングンというのは、人間を尊重するという感覚を基本的に持っていた人だと思うんですね。不信感がうずまいているなかでも、信念を持ち、未来に対する希望を持ち、同僚たちを信頼する姿が描かれていると思いました。ただ、演じるのは難しかったです。監督の考えられているアン・ジュングン像もありますし」
――監督はどのようにヒョンビンさんにアン・ジュングンのイメージを伝えられていたのでしょうか。
ウ・ミンホ「私自身は、アン・ジュングンの自叙伝などを読んで、高潔な精神を持っていて、品格のある人だと思いました。戦いのなかでも、尊厳を守っていた人だと思いますし、そこに重きを置いて描きました。アン・ジュングンは、多くの同志たちの犠牲と献身の上でハルビンに到着します。同志のことを考えると、自分には失敗はできないという、想像もできないようなプレッシャーがあったと思います。またアン・ジュングンはカトリック教徒でした。だから、アン・ジュングンが歩くシーンでは、キリストが十字架を背負って歩くような、苦しみを表現しました。氷上を歩くシーンなんかが、まさにそういうシーンです」
ウ・ミンホ「その後、アン・ジュングンは地下室で同志たちが言い争いをしているところに現れるんですが、そのとき、どのような姿で現れるのがいいんだろうということもたくさん話しました。話し合いの結果、まさにキリストが40日の戦いを経て帰ってきた時のような、疲れ切ってすべてを超越した感じを表現しようと思いました。アン・ジュングンが大陸の氷上でどのような気持ちでいたんだろうかと考えるんです。恐らく彼は、どこまでも続く氷の上で、自分の肉体をちっぽけなものだと感じていたと思うんですね。でも同時に精神が目覚めて崇高な気持ちになっていたんじゃないかと思うんです」
「アン・ジュングンの心情を小さな瞳の揺れや息遣いで伝えることで、より観客の心に響くのではないか」(ヒョンビン)
――そういう精神を表すときに、ヒョンビンさんがいつでも繊細で、決して大げさには演じていなかったのが印象的でした。監督は、ヒョンビンさんが作ってきた演技を見てどう思われましたか?
ウ・ミンホ「望んでいた通りで100%以上だったと思います。作品の重要なキーワードは、そこにいた人たちの思いをどのように観客に伝えるかということでした。そのためには、私たち、撮る側の姿勢が重要だと思いました。あまりにも私たちが興奮した状態で撮ってしまうと、登場人物たちの気持ちが軽くなってしまうのではないかと思ったんです。だから、カメラもできるだけ遠くから撮るようにしました。登場人物たちの思いを目で見せるだけではなく、その重みを感じてもらえるようにしたんです」
ヒョンビン「私は状況そのものが隠れていたり、恐れを感じて委縮していたりする姿が描かれるので、これは大きく見せるべきではないと思ったんですね。小さな瞳の揺れや息遣い、抑えたトーンで伝えていくことが、より観客の心に響くのではないかと考えていたんです。アン・ジュングンというキャラクターは耐え抜いて我慢して委縮しています。そして、耐え抜いた結果の行動が重要な人物だと思ったんですね。なので、そういうことを意識しながら演じました」