ヒョンビンとウ・ミンホ監督が来日インタビューで語った『ハルビン』への決意「小さなかけらが合わさって、世の中が変わる」
「愛の不時着」で日本でも一気に人気に火が付いたヒョンビン。『KCIA 南山の部長たち』(21)で大統領暗殺にいたるまでの重厚な人間ドラマと心理描写を描出したウ・ミンホ監督。韓国屈指の俳優とクリエイターが初めて組んだ『ハルビン』(公開中)は、安重根(アン・ジュングン)と同志たちの祖国を守るための戦いと絆を描いたアクション・サスペンスだ。同作を引っ提げて来日し、伊藤博文役リリー・フランキーとのイベントでの掛け合いも話題になったヒョンビンとウ・ミンホ監督。韓国の人々なら誰もが知るアン・ジュングンを2人はどう描き、演じたのか。PRESS KOREAで独占インタビューを行った。
「アン・ジュングンはよりよい未来に向けて行動した人でした」(ヒョンビン)
――ヒョンビンさん、ウ・ミンホ監督は、お互いの作品で印象に残っているものはありますか?
ヒョンビン「監督の作品をすべて観ている人間として、一作を選ぶのはとても難しいんですが、『KCIA 南山の部長たち』や『インサイダーズ/内部者たち』などを思い出します」
ウ・ミンホ「韓国に住んでいてヒョンビンさんの作品を観ていない人っていないと思うんですよ。僕もヒョンビンさんの出演作品が大好きです。中でも『彼らが生きる世界』というドラマは、放送局を舞台にドラマ制作をしている人たちを描いた作品で、ヒョンビンさんもドラマの監督を演じているので、私と同じ職業だと思って共感しながら観ました。『私の名前はキム・サムスン』もよかったですね。でもやっぱり私が一番好きなのは『ハルビン』でアン・ジュングンを演じたヒョンビンさんです(笑)」
――その『ハルビン』ですが、監督はヒョンビンさんこそがアン・ジュングンにふさわしいと思ったそうですね。撮影の中でも、ヒョンビンさんにしか演じられないと思った瞬間はありましたか?
ウ・ミンホ「もちろん、瞬間、瞬間でそう思っていました。目の動き一つとっても、アン・ジュングンの恐れを表現していましたし、彼の『必ず成し遂げるんだ』という信念や意地、そして悲しみを表現していると思いました。実は以前、ほかのドラマのヒョンビンさんを見て『いい目をしているな』と思ったことがあったんですけど、この目を私の映画でも見せてほしいし、スクリーンで観客に見せたいと思いました。だから、この映画のエンディングも目で表現するようなシーンになりました。反対に表情が見えなくても感情が伝わるシーンもありました。アン・ジュングンが列車に乗って移動するときに、帽子を目深にかぶっていて目が見えていないんですけど、それにも関わらず、その佇まいから感情が伝わってきました」
――ヒョンビンさんはアン・ジュングンを演じることで、いままでと違った自分を演じられたと思う部分や、難しいと思った部分はありましたか?
ヒョンビン「俳優の立場からすると、実在の人物を演じるということは大変なプレッシャーがあるんです。なぜなら、実在の人物に関しては、皆さんそれぞれにイメージがあるからです。だから、実在の人物を演じるとき、イメージに寄り添うべきか、映画のなかで新たなイメージを作るべきなのかで悩みます。アン・ジュングンの場合は、韓国でも存在感のある人物なので、さらに大きなプレッシャーがありました。ただ、資料などを読んでいると、アン・ジュングンという人は非常に思慮深く、多くのことを考えていた人だということに気付きました。教育の重要性を考え、後に学校を設立したり、アジアの平和に対しても考えを持っていたり、よりよい未来に向けて行動した人でした。当時、彼が考えていたことは、現代にも通じる部分があると思いながら演じました」