ジェームズ・ガン監督が語る、スーパーマンとKAIJUが戦うワケ「彼は怯えているただの巨大動物として見ている」
「スーパーヒーローによる感情の違いを部分を描きたい」
また、ガン監督は日本の映画にも大きな影響を受けていると語っている。劇中の印象的なKAIJUとスーパーマンが戦うシーンでは、そうした影響の一端を垣間見ることができる。さらに、スーパーマンとKAIJUの戦闘シーンには、スーパーマンに対する様々な想いが込められていた。
「僕が子どものころに大好きだったスーパーマンのコミックスでは、彼が時々巨大モンスターと戦うことがあったんです。だから、そういうスーパーマンの映画を作りたいという想いもありましたし、スクリーンでスーパーマンが巨大モンスターと戦うところを観たかったから取り入れた部分でもあります。それから、スーパーマンとKAIJUとの戦いはいろんなスーパーヒーローの倫理感の違いを描くうえで、ちょっとおもしろい手段だとも思いました。KAIJUをただ殺すことを目的とするスーパーヒーローがいる一方で、スーパーマンはKAIJUのことを行き場を失って、おそらく怯えているただの巨大動物として見ている。あのシーンでは、そういうスーパーヒーローによる感情の違いを部分を描きたいと思ってもいたんです」
最後に自身が参考にした日本の怪獣映画や、インスピレーションを受けた日本映画について語ってもらった。
「参考にした作品はもちろんあります。ゴジラと戦った怪獣がたくさん登場する『怪獣総進撃』や『ゴジラ-1.0』など、日本で作られたたくさんの巨大モンスター映画は大好きなので。でも、特に日本映画について言えば、僕のお気に入りは三池崇史監督の作品や、今回の映画でスーパードッグのクリプトのモデルになった僕の飼い犬の名前にもなっている小津安二郎の作品(ガンの飼い犬のは“オズ”という名前がつけられてる)ですね。日本映画はアメリカの映画にはない形で、ポップカルチャー的な要素をうまく映画のジャンルに取り入れていると思います。僕は一般的なアメリカ映画よりも東アジア映画の影響をずっと受けてきたので、そこには日本はもちろん、香港や韓国の映画も含まれているんです。そして、自分で映画を撮る際にはおもにそこからインスピレーションを得ることで表現している部分がたくさんあります。それは今回の『スーパーマン』にも当然ながら活かされています」。
ガン監督ならではの視点で語り直される原典たるヒーロー、スーパーマン。そしてその存在をより印象深くする往年の宿敵、レックス・ルーサー。2人の戦いのなかには、新しい解釈とメッセージ、そして日本映画から受けたインスピレーションが閉じ込められている。その物語は、はたしてどのような形で昇華されているのか?ぜひ劇場でその仕上がりを確認してほしい。
取材・文/石井誠