政治的混乱が映画界にも影響…ユ・ヘジン出演作『野党』『焼酎戦争』、異色のヒーローコメディ『ハイファイブ』など韓国現地の話題作は?
臓器移植で超能力覚醒?コミカルなアクション『ハイファイブ』
奇想天外なヒーローものとして好評を得たのは、カン・ヒョンチョル監督の『ハイファイブ(原題:하이파이브)』。臓器移植で超能力を得た5人を演じたのは、イ・ジェイン、アン・ジェホン、ユ・アイン、ラ・ミラン、キム・ヒウォン。5人並んでもあんまり強そうに見えないところがいい。もちろんコメディだ。ヒョンチョル監督は、『サニー 永遠の仲間たち』(11)の監督で、仲違いしながら一致団結していくストーリーは重なるところもある。
主人公のパク・ワンソ(イ・ジェイン)はテコンドー選手を夢見る女子中学生だが、試合中に心臓が止まり、移植手術を受けたあとから“怪力”の超能力を得る。5人はそれぞれ移植を受けた部位によって超能力の種類も様々だ。いちいちあり得ない設定でも、俳優たちの名演と斬新な展開で最後まで目が離せない。特に後半で登場するパク・ジニョンの悪役っぷりが光る。映画公開と同時期にドラマ「未知のソウル」ではお人好しの青年を好演していたので、そのギャップが話題になった。
ユ・アインが出演しているのは、撮影時期が2021年で彼が麻薬事件で捜査を受ける前だったから。イ・ビョンホンとユ・アインが主演する映画『スンブ:二人の棋士』(25)も3月に公開されて好評を得ている。演技力は誰もが認めるところなだけに、惜しい。
ベルリン映画祭の話題作『破果』
ミン・ギュドン監督の『破果(原題:파과)』は、ベルリン国際映画祭で話題となり期待が高まっていた。原作のク・ビョンモの小説は日本語版も出ており、日本の原作ファンの関心も高いようだ。主人公は殺し屋のチョガク、初老の女性だ。そんな異色の主人公を演じたのはイ・ヘヨン。イ・ヘヨンといえば近年はホン・サンス監督作でお馴染みで、おっとりした優雅な女性のイメージが強いが、『破果』のチョガクは人を寄せ付けない冷たさを漂わせながら、実はあたたかさも持った女性。老化と、そのあたたかさが殺し屋としては致命的な失敗を生む。
チョガクの前に現れた若き殺し屋トゥ(キム・ソンチョル)は、なぜかチョガクを挑発し、彼女の大切なものを奪おうとする。その“大切なもの”というのは、2人の過去をたどれば見えてくる。害虫を駆除するかのように、“防疫”という名の“殺人”を繰り返してきた女の末路とは?
最後に『ノイズ(原題:노이즈)』は、キム・スジン監督の長編デビュー作。『スーパーマン』(公開中)や『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(8月8日公開)などのハリウッド大作と並んでの公開となったが、口コミで徐々に評判が広まって観客数は120万人を突破する善戦を見せている。
本作は、マンションの“騒音トラブル”を素材にしたスリラー。身近な問題なだけに我がことのように引き込まれる。『野党』で大統領候補の息子を演じたリュ・ギョンスは『ノイズ』でも新たな顔を見せ、狂気に満ちた目と落ち着いた口調で観客を恐怖に陥れる。
文/成川 彩