綾野剛と柴咲コウが『でっちあげ』で演じた“圧倒的な静と動”。2人が語る薮下&律子像とは?
「この作品は2時間強の壮大な“切り抜き” ともいえます」(綾野)
――三池組の現場を何回か見学させていただいたことがありますが、まさに職人集団で段取りから本番までの流れが早い印象があります。その中心にいる三池監督との日々を改めて振り返っていただけますでしょうか。
柴咲「私は『喰女 -クイメ-』以来10年ぶりくらいでしたけど、相変わらず優しくて、シャイでした(笑)。でも、打ち上げの時にお話しすると、普段言葉にしないことを映像にしていらっしゃる方なんだな、というのを感じるんですよ。言葉にしてわかってもらおうということを優先している人ではないんだなって。そんな話を(出演者の)みんなでしていました」
綾野「ただただ至極まっとうに一歩一歩、丁寧に歩いていらっしゃる方です。久しぶりにご一緒して改めて圧倒されました」
――その三池監督がこれまで撮ってきた作品群とは少し毛色が違うと言いますか、いい意味で予想を裏切られた映画に仕上がったのではないか、という印象を抱いています。お二方はいかがでしょうか?
綾野「『でっちあげ』の撮影では“毎回、現場をとにかく生き抜く”ことに集中していたので、完成した映画を観るまでは、こんなにワクワクする作品になると思っていませんでした。冒頭から、『どうなっていくんだ?』と引き込まれて、気づくと純粋に楽しんでいました。三池さんの視点で繋がれた今作を観ることで、三池さんの脳内をほんの少しだけ知れた気がして心地よかったです。
この作品は2時間強の壮大な“切り抜き” ともいえます。薮下と氷室さん家族が織りなした数年間もの年月をシーンごとに繋ぎ、演出、編集。そして最後に三池さんの視点と感性による切り抜き方であることに、とても魅力を感じました」
――なるほど、壮大な“切り抜き”とは…言い得て妙です!これは余談なんですが、柴咲さんと小林薫さんが同じ画角の中に収まっているのが、「Dr.コトー診療所」や「おんな城主 直虎」好きとしてテンションが上がりました(笑)。
綾野「お2人が現場に揃うと、芝居の圧がすごいんです。しかも、それほどに共演されていることを微塵も感じさせない立ち居振る舞いだったことにも、感銘を受けました」
柴咲「まあ、もう(共演歴が)長いですし、『Dr.コトー』の映画版の撮影以来だったので、そんなに間が空いていたわけでもなかったので、はい(笑)」
――そして、週刊誌記者の鳴海を演じた亀梨和也さんのケレン味も効いていました。
綾野「僕は本当に久しぶり(ドラマ『妖怪人間ベム』以来14年ぶりの共演)だったので、またご一緒できてとてもうれしかったです。亀ちゃんが元々持っている推進力や寛容さに改めて人としての深みを感じました。相手をノーフィルターで見つめ、コミュニケーション能力が高いという言葉では括れない、とにかく魅力的な男なんです。芝居合戦のトーナメントで当たる強敵のひとりでもあって、打ちのめしたと思ったら打ちのめされる。でも、それがまた心地よかったです。コウさんは亀ちゃんとなにか作品でご一緒されているんですか?」
柴咲「作品でご一緒するのは初めてなんですよ。お仕事じゃない場でバッタリ会ったことがあったので、初対面ではなくて。で、法廷のシーンで北村(一輝)さんと3人でワチャワチャしていたんですけど(笑)、ムードメーカーというか、彼がいてくれると場が明るく華やぐんですよね。法廷のシーンって撮影も長いので、エキストラの人も疲れちゃうことが多いんですけど、そういう時は亀梨さんが空気を変えてくださって。そういう魅力がある方ですよね。ただ、法廷で張りつめたシーンを撮っているのに、意図せず場が和んじゃうこともありましたけど(笑)」
綾野「亀ちゃんはなにか『いいな』と思ったことを認める速度が、ものすごく速いです。しかも素速く消化したうえで素速く表現できるんです。芝居が終わったあとに『剛くんの芝居、めちゃくちゃよかった!』って言ってくれるので、雨降らしの大変なシーンもがんばれちゃうんですよ」
柴咲「それ、すごくわかります。亀梨さんは乗せるのが上手なんですよね」
綾野「そのフレキシブルさは根っからの優しさに起因しているんだろうなと、改めて感じましたし、そういった空間と時間を体験させてくださった三池組のみなさんに、心から感謝しています」
取材・文/平田真人

■衣装協力
・綾野剛
スーツ(ヴィンテージ):¥88,000(King of Fools/Instagram:@kingoffools_designers_vintage)
人差し指リング:¥22,000
小指リング:上から¥24,200、¥11,000、¥22,000
※リングすべてヴィンテージ(RESURRECTION/Instagram:@resurrection_gallery)
・柴咲コウ
チュールレースハイネック(near.nippon):¥18,700(near./0422-72-2279)
ドレープドレス(CINOH):¥49,500(MOULD/03-6805-1449)
ピアス(PRMAL):¥55,000/1つ売り価格(PRMAL/support@prmal.com)
ネックレス(oeau):¥330,000 (Harumi Showroom/03-6433-5395)