ヘルボーイってそもそも何者?シリーズ解説から最新作『ザ・クルキッドマン』が“異色”なワケまで
異色だけど原作通り!? 予備知識がまったくいらない『ザ・クルキッドマン』の魅力
ここからは原作、そして映画3作品を踏まえた、最新作『ザ・クルキッドマン』の見どころについて紹介していこう。前3作品では物語のスケール感を重視して「現代」を舞台とした長編シリーズを原作に映画化されてきたが、『ザ・クルキッドマン』では初めて短編シリーズを、つまり「過去」が舞台となっていることがポイントだろう。短編シリーズには、ヘルボーイがその力を使って、世界のオカルトや怪奇現象に立ち向かうというスケール感を別にした抜群のおもしろさがあり、日本の作品で例えると、「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎が世界の妖怪を相手にする展開…と言えばわかりやすいだろうか。
原作となるのは「ヘルボーイ:捻じくれた男」から、原作ファンからも高く評価され、アメリカの権威のあるマンガ賞のアイズナー賞を受賞した表題作をチョイス。人里離れた山間部で、アメリカの民話にならった魔女伝説やネイティブアメリカンの伝承などをモチーフにしたホラーテイストの物語が展開される。そこにヘルボーイの出生の秘密にも少しだけ触れるアレンジが加わることで、短編シリーズのよさを活かしつつ、冒頭でも触れた通りこの作品からヘルボーイに触れる人にも予備知識なしで楽しめる作品に仕上がっている。
「アドレナリン」シリーズや『ゴーストライダー2』(11)など、派手なアクション映画を主軸にしてきたブライアン・テイラー監督は、自身が得意とするテイストを残しつつも、ヘルボーイで描かれるゴシックホラー的なダークさをうまく重ね合わせ、これまでの実写映画化からすれば異色、原作ファンからすると原作へのリスペクト感が最も強い王道的な作品としてまとめあげているのだ。
ヘルボーイがリブートされていく意義とは
アメコミヒーローものを扱った作品は、特に根強いファンの間で、キャストやスタッフが一新されると「リブートされた」という方向に話題が行ってしまいがちだ。しかし、今回のヘルボーイは短編シリーズを映像化されたことによって、日本の探偵ものである金田一耕助を主人公とした作品のように変わったのではないかと筆者は考える。
金田一耕助といえば、石坂浩二をはじめ様々な役者が演じ、多くのクリエイターによって制作されてきたが、同じ作品を原作としても、特にはホラー色を全開にするなど独自の切り口を加えられてきた。「ヘルボーイ」に関しても、同じなのではないかと思う。圧倒的な存在感を見せるロン・パールマンのヘルボーイもいいが、ワイルド感あふれるデヴィッド・ハーパー版も悪くない。そして、今作のジャック・ケシーの演じるヘルボーイは、落ち着いた雰囲気とイケメン感、巨漢の印象が強かった体格からややシャープなマッチョ感というアプローチになっており、これまでの雰囲気とは異なる味わい深さがある。
ストーリーや作風、キャストのチョイスなど、「ヘルボーイ」は様々なアプローチが魅力となる新境地に入ったと言っていいだろう。今回紹介した基礎知識をもとに、新たな可能性を見せる「ヘルボーイ」をぜひ堪能してみてほしい。
文/石井誠