ダニー・ボイル&アレックス・ガーランドが『28年後…』で追求した、“常識破り”のアプローチとは

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ダニー・ボイル&アレックス・ガーランドが『28年後…』で追求した、“常識破り”のアプローチとは

『28日後…』(02)、『28週後…』(07)に続く、サバイバルスリラーシリーズの最新作『28年後…』(公開中)。このたび、久々にタッグを組んだダニー・ボイル監督と脚本家のアレックス・ガーランドの“黄金コンビ”が本作の革新性について語るコメントを独占入手した。

本作の舞台は、人間を凶暴化させるウイルスが蔓延した世界的パンデミックから“28年後”の世界。感染を逃れた人間たちは、本土から離れ孤島に身を潜めていた。対岸にいる感染者たちから身を守るため、厳しいルールに従って暮らす島の住民たち。そんななか、ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と息子のスパイク(アルフィー・ウィリアムズ)は、ある“極秘任務”を遂行するために本土へと足を踏み入れていく。

【写真を見る】感染者に襲われて大疾走!逃げ切れるのか?
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ボイル監督とガーランドの“黄金コンビ”のはじまりは、レオナルド・ディカプリオが主演を務めた『ザ・ビーチ』(00)から。当時ガーランドは小説家として活動しており、両者の関係は監督と原作者であった。しかし、そのコラボレーションをきっかけに、かねてからゾンビ映画への憧れが強かったガーランドは、あるアイデアをボイル監督に提案。初めて映画脚本を手掛け、生まれたのが『28日後…』だった。

同作は、従来のゾンビ映画にあったようなゆっくりと歩いて徘徊するゾンビではなく、全速力で走って襲いかかってくる“感染者”が登場することで、ゾンビ映画というジャンルの概念を刷新する革新的作品として高い評価を獲得。再び監督と脚本家としてタッグを組んだ『サンシャイン2057』(07)を経て、『28週後…』では共に製作総指揮を務めた。

パンデミックから逃れた、ある家族の物語が中心に描かれていく『28年後…』
パンデミックから逃れた、ある家族の物語が中心に描かれていく『28年後…』

その後、ボイル監督は『スラムドッグ$ミリオネア』(08)で第81回アカデミー賞で作品賞や監督賞など8部門を席巻し世界的名匠の仲間入りを果たす。一方で、ガーランドも『エクス・マキナ』(15)で監督デビューを飾り、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)が高評価を集めるなど、映画監督としての地位を不動のものとしていく。そして本作で、両者は18年ぶりにタッグを組むことに。

本作の革新的なポイントと言えるのは、終末世界を描いた作品では珍しく、ウイルスを克服する術を持たずに感染者だらけの世界を生きていくしかない“普通の家族の物語”が描かれること。ガーランドは「いつも型破り、それがダニー・ボイルだ。ジャンルにおけるお約束を裏切っていく」と盟友への賛辞を送ると、「恐ろしいウイルス感染がテーマになる映画で、子どもを主要キャラクターにするのはこうしたジャンルの常識からは外れている。物語には、ほかにもいくつかそうした予想を裏切る要素がある」と語る。

またボイル監督は「映画というのは成功したか否かにかかわらず、時間と共に人々の記憶に収まるべきところへと収まるもの。しかし、たまに強く記憶に残る作品があって、最初の『28日後…』もその一つで、観客からの反応が大きかった」と振り返ると、「アレックスと続編について相談しはじめて、最初はウイルスを兵器化するような物語も考えましたが、いまひとつ魅力を感じず、もっと壮大な家族の物語を考え始めました」と、本作が生まれた経緯を明かした。

斬新な制作手法やストーリー構成、キャラクター設定など、既存の枠組みに収まらない映画づくりを目指し続けてきたトップクリエイターコンビが、現実に世界的パンデミックを経験した人類に向けてどのような物語を提示してくれるのか。徹底したリアリティと臨場感を追求して描かれる“常識破り”のサバイバル・スリラーを、是非ともスクリーンで堪能してほしい。


文/久保田 和馬

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