阿部寛、『キャンドルスティック』長編初監督・米倉強太の才能に太鼓判「すばらしい作品になった」津田健次郎は阿部との初共演に「緊張しました」
日本と台湾の共同製作映画『キャンドルスティック』(7月4日公開)のジャパンプレミアが6月19日にヒューリックホール東京で行われ、阿部寛、菜々緒、アリッサ・チア、サヘル・ローズ、津田健次郎、YOUNG DAIS、米倉強太監督、SYOTA(DUAL Voc.)が出席した。
平成から令和へ元号が変わり、日本の金融システムが最も隙だらけの日に、元天才ハッカーの野原(阿部)が難攻不落の“AI”を騙し大金を手にいれる計画を発案。日本、台湾、イラン、ハワイなど世界4か国6都市を舞台に、FXトレーダーの杏子(菜々緒)ら10人のろくでなしたちが騙し騙され、スリルと策略が交錯する、前代未聞のミッションに挑む姿を描く。この日はオープニングアクトとして、SYOTAがエンディングテーマ曲「I need you」を生歌唱。「誘拐されたことがある」というSYOTAは、「その時に死ぬと思った。子どものころの夢が歌手だったので、もし生きていたら歌手になろうと思った。そこで作ったのが『DUAL』というバンドです」と強烈なエピソードを明かして、冒頭から会場を盛り上げていた。
刑務所上がりの元天才ホワイトハッカーで“AIを騙す”計画の発案者、野原を演じた阿部は、株やFXなどが題材となる内容だけに「脚本を読んでもあまりイメージが湧かなかった」と吐露。しかしながら完成作を観ると「詳しくない人でもその世界がわかるような作品になっていた」と出来栄えに惚れ惚れとしたそうで、「世界6都市の話ですが、観ていても心地がよかった。新しい合作ができたなと思っています。融合がすごくうまくいっている」と長編映画初監督を務めた米倉監督に敬意を表していた。
野原にも自分と同じ共感覚を感じ、計画をサポートする杏子を演じたのが、菜々緒だ。「演技派の皆さま」と豪華キャストと共演できたことに感激しきりの菜々緒は、「皆さんの目がすごく印象的な作品。ぜひ、目に注目して観ていただけたらうれしいです」とアピール。さらに、阿部との共演について「大先輩。ご一緒させていただいて、しかも恋人役という近しい関係だったのですごくうれしかったです」と喜びを口にした。すると「うれしかったですよ」と続いた阿部は、印象的なシーンとしてクライマックスに触れようとして「ダメだ…」と苦笑いでネタバレ回避。「うれしかったです」と話すにとどめて、会場を笑わせていた。
杏子の元夫で数学者の功役を演じた津田は、阿部との初共演に「緊張しました」と告白。撮影初日から激しいシーンを撮影したそうで、阿部が「面識のないなか」と笑うと、津田も「初めまして、というところから」と楽しそうに振り返っていた。そして台湾を代表する俳優であるアリッサ・チアが、台湾の大企業の幹部リンネ役に扮した。「この映画がとても好き」と愛情をにじませたチアは、「皆さんと一緒に共演できてすごくうれしい。皆さんに巡り会えて、監督に感謝しています」と感謝を述べた。
また東京近郊で移民、難民の子どもたちを育てる施設を守るファラーを演じたサヘル・ローズは、「いまイランの情勢も不安ななかで、奇跡の映画になった」と国を超え、力を合わせて映画作りができたことにしみじみ。「参加できたことが光栄」と語った。その施設のオーナー吉良を演じたYOUNG DAISは「感無量です」と笑顔を浮かべ、「演技派、実力のある方々が出演されていて、見どころ満載。スピード感にぜひついてきてほしい」と上映を控えた観客に呼びかけていた。
“AI”を騙そうとする映画の内容にちなみ「AIに相談してみたいこと」を聞かれる場面もあった。阿部は「いつもなにをしゃべろうかなと思う。正式な場所でのしゃべりなどを要求されると、気の利いたことを言わないといけない。ほかの方を見ていて、すごいなと思うんです。気の利いたことを言えるように、AIに相談してみたい」と素顔をのぞかせていた。オープニングアクトから国際色豊かなキャストによるトークなど、最後まで盛り上がりを見せたイベントとなったが、最後に阿部は「プロデューサーから、同じメンズノンノ出身で、阿部さんの後輩で、ミュージックビデオなどを作っている監督がいる。才能があるから、ぜひご一緒しませんかという話があって。台本を読む前からこれはやりたいと思って、すぐにお返事をした。可能性をすごく感じた」と改めてオファー時の様子を回顧。「試写で(完成作を)観たら、すごい才能だなと思った。カメラマンも元役者で、僕たちがどう動くかを先読みして撮っていらっしゃる。一人一人のキャラクターがきちんと描かれている。すばらしい作品になった」と力を込め、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝