母は一世を風靡したロマコメの女王、父はオールアメリカンなグッドルッキングガイ!なのに地味な二世俳優ジャック・クエイドの類まれなる“普通力”
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『サンダーボルツ*』(公開中)のワイアット・ラッセルやビル・プルマン、『ノスフェラトゥ』(公開中)のリリー=ローズ・デップ、ビル・スカルスガルドなど、最近も多くの二世俳優の活躍が目立つハリウッド。どんな役を演じても、それとなく華やかな雰囲気を感じさせる二世俳優だが、そんなオーラとは無縁とも言える“普通すぎる男”をご存知だろうか?
母はメグ・ライアン、父はデニス・クエイドの超サラブレッド!
なんとも親しみやすい雰囲気を放つ平凡ナイスガイの名は、ジャック・クエイド。現在33歳のジャックの母親は『恋人たちの予感』(89)や『めぐり逢えたら』(93)など、80年代後半〜90年代にかけてロマンティック・コメディに出演し、一時代を築いたメグ・ライアン。そして父親は、『ヤング・ゼネレーション』(79)や『ビッグ・イージー』といった作品でアメリカ的ハンサムとして名を上げたデニス・クエイドだ。
『D.O.A.』(88)での共演をきっかけに恋に落ちた2人は、1991〜2001年まで結婚生活を送り、1992年に一人息子のジャックが誕生。ジャックは数々の映画人で知られる名門ニューヨーク大学のティッシュ芸術部に進学し、ドナルド・グローヴァーらを輩出したコメディグループHammerkatzに所属すると、在学中に『ハンガー・ゲーム』(12)のマーベル役でデビューを果たした。
デビューしてしばらくは端役が続くあまりパッとしない時期を過ごしてきたジャックだったが、2019年にドラマ「ザ・ボーイズ」の主人公に抜擢されると、作品の大ヒットと共にブレイクを果たし、現在へと至る。
「ザ・ボーイズ」では異常者ぞろいのなかで、唯一共感できる主人公に
華々しくキャリアをスタートさせた父親や母親とは正反対とも言える“普通さ”こそがジャックの持ち味。だからこそ出世作「ザ・ボーイズ」では、まだまだ知名度が低かったにもかかわらず主役に抜擢されたのかもしれない。
企業によって管理されたスーパーヒーローたちが活躍する世界を舞台に、超能力を持たない人間集団ボーイズが、自己中心的なクソ野郎であるヒーローたちの闇を暴こうと奮闘する本作。ジャックが演じるのは小さな電化製品店で働く平凡な青年ヒューイ。ある日、超俊足男Aトレイン(ジェシー・T・アッシャー)によって恋人を轢き殺されたことから、ボーイズの仲間入りを果たすキャラクターだ。
もともとヒーロー好きだったものの、この一件を機に彼らの裏の一面を知り、ヒーローを憎むようになるヒューイだが、一般人アニーとして出会ったヒーロー、スターライト(エリン・モリアーティ)と恋に落ちたり、恋愛関係に発展するも元恋人への罪悪感を抱いたりと感情がぐらつきまくりのあくまで普通の人間だ。
怒りに駆られてとっさにヒーローを爆殺してしまったり、仲間を守るため一時的に超人になる薬を飲んだりと、その場の勢いで行動してしまう半人前だが、その未熟さが視聴者の共感を誘うハマり役だった。
声でも普通の男を演じた、アニメ「スタートレック:ローワー・デッキ」
声優としても活躍しているジャックは、宇宙艦隊所属艦のなかで最も重要度が低いとされる宇宙艦U.S.S.セリトス号の下部デッキで働く若き士官の活躍を描くアニメシリーズ「スタートレック:ローワー・デッキ」で、メインキャストのボイムラーの声を担当している。
ボイムラーは地球人の男性で、とにかく生真面目でビビリだが出世はしたいという、言ってしまえばいい奴だが面白味に欠ける人物。クエイドはコミカルに声色を操りながらキャラクターの情けない部分などを表現。それゆえにボイムラーが時折見せる頑張りや暴走が際立っており、ここでも持ち前の“普通力”でキャラクターに魅力を与えた。