その教師に誰もが惑わされる…『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』『悪の教典』『セッション』など、映画に出てきたヤバすぎる教師たち

その教師に誰もが惑わされる…『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』『悪の教典』『セッション』など、映画に出てきたヤバすぎる教師たち

典型的な昭和教師が、生徒を殺し合いへといざなう『バトル・ロワイアル』

無人島に連れて行かれた中学生たちが、かつての担任によって殺し合いゲームに参加させられる『バトル・ロワイアル』 
無人島に連れて行かれた中学生たちが、かつての担任によって殺し合いゲームに参加させられる『バトル・ロワイアル』 『バトル・ロワイアル』 発売中 DVD5,720円(税込) 発売元・販売元:東映ビデオ [c]2000 「バトル・ロワイアル」製作委員会

高見広春のベストセラー小説を深作欣二が映画化。国家が中学生に殺し合いを強いる内容が物議を醸し、政治家が公開を規制すべきと発言したことも手伝って社会現象を巻き起こす大ヒットを記録した問題作だ。経済危機によって失業者があふれ治安が悪化するなか、全国の中学校から選ばれたクラスの生徒に殺し合いをさせる、新世紀教育改革法「BR法」が制定された。選ばれたクラスの担当キタノ(ビートたけし)は修学旅行と偽り、七原(藤原竜也)や中川(前田亜季)ら生徒たちと無人島に向かい、彼らに銃を突き付け殺し合いをするよう強要する。

映画の舞台は大人が威厳を失くし、若者たちに怯えるように生きている世界。学校では体罰は厳禁され、生徒ファーストが徹底されていた。しかしキタノはその風潮になじめず、悶々とした日々を送っていた。そんなキタノは殺し合いの舞台となる無人島に着くと、言うことを聞かない自分勝手な生徒を、ナイフや逃走防止用爆弾で次々に処刑するなど、暴君気取りで振る舞っていく。その一方で教師として、また親としての苦悩も吐露。生徒たちの血で血を洗うバトルシーンの最中に、唯一彼の授業を真面目に受けていた中川や、自分を嫌う娘に託したメッセージに、彼の素顔や若者たちへのエールが見え隠れする。物語のクライマックスでキタノが繰り返す言葉に、感じるものがあるはずだ。

天才を生みだすことに取り憑かれたパワハラ教師『セッション』

ジャズドラマーを目指す青年が厳格な指導者に追い詰められつつもドラマーとして成長していく『セッション』
ジャズドラマーを目指す青年が厳格な指導者に追い詰められつつもドラマーとして成長していく『セッション』[c]Everett Collection/AFLO

名門音楽学校を舞台に、ドラマー志望の青年とスパルタ教師の確執を描いたスリリングなヒューマンドラマ。のちに『ラ・ラ・ランド』(16)でアカデミー監督賞に輝くデイミアン・チャゼルの出世作だ。ジャズドラマーを目指して名門音楽学校に入学したアンドリュー(マイルズ・テラー)は、伝説の教師フレッチャー(J・K・シモンズ)に認められ、彼のクラスで学ぶことになった。罵声が飛び交うフレッチャーの攻撃的な指導のもと、しだいにアンドリューは狂気の淵に追い込まれていく。ケガをしたまま大会に出場しフレッチャーにダメ出しをされたアンドリューは怒りに駆られ、彼のいきすぎた指導を学校に通報してしまう…。


完璧主義のフレッチャーは些細なミスも見逃さず、激しい口調で生徒たちを責め立てる。言ってできなければイスを投げつけ、それでもダメなら平手打ちを連打する姿はまさに鬼軍曹。厳しい指導のもとアンドリューは実力を発揮していくが、容赦ない指導をめぐってフレッチャーと対立。ジャズ・フェスティバルに出場したアンドリューは、フレッチャーの指揮や曲を無視してソロでドラムを叩いていく。両者の間に激しい火花が飛び交うが、その時に見せるフレッチャーの表情が、命懸けで音楽に携わってきた彼の真意を伝えてくれる。暴力はもちろん許されることではないが、狂気の指導の先で、常人には行きつけない領域にたどり着いた2人の関係性は、多くの物議を醸した。

薮下の本当の姿は?綾野剛の怪演にも目が離せない
薮下の本当の姿は?綾野剛の怪演にも目が離せない[c]2007 福田ますみ/新潮社 [c]2025「でっちあげ」製作委員会

生徒の育成や指導、管理を担う学校において、教師は絶対的な存在だ。ここで紹介した作品たちは、そんな教師のポジションを生かしたリアルな怖さが魅力。同時に学校は閉じた世界で、そのことも学校におけるトラブルが絶えない理由であると言える。はたして薮下の本当の姿は?二転三転しながら真実に突き進む展開も『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』の魅力。衝撃の真相を、映画館で確認してほしい。

文/神武団四郎

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