小栗旬が映画『フロントライン』で考えた真実を知ること、見極めの大切さ。「ちゃんと疑わなきゃいけないってことなのかな」
日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基に、未知のウイルスに最前線で立ち向かった医師や看護師たちの闘いをオリジナル脚本で描いた映画『フロントライン』(6月13日公開)。
2020年2月横浜港、乗客乗員56か国、3,711名。あの船で、一体なにが起きていたのか。100名を超える乗客が症状を訴えるなか、出動要請を受けたのは災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」。地震や洪水などの災害対応のスペシャリストだが、未知のウイルスへの対応は専門外の医療チームだった…。目の前の乗客の命を優先して行動するDMATの指揮官の結城英晴を小栗旬、厚生労働省の役人の立松信貴を松坂桃李、現場で対応にあたるDMAT隊員の真田春人を池松壮亮、実動部隊のトップでDMATの事務局次長の仙道行義を窪塚洋介が演じている。
「報道で知っていたこととのギャップに驚きました」
豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での出来事をニュースで知っていたつもりだったが、実際には知らないことだらけ。作品を通して知った“事実”とのギャップに衝撃を受けたと振り返った小栗。「薬が不足していることをニュースで見た記憶はあるけれど、それがどんなふうに収束したのかは、正直追いかけていなかった。映画に出てくる隔離可能な施設への移送シーンも事実に基づいているけれど、自分はニュースで観たのかな?という感じではっきり記憶になくて。とにかく知らないことだらけだったこと、報道で知っていたこととのギャップに驚きました」と正直に明かす。
コロナの脅威が世界で広がりつつあるころ、小栗は海外にいた。「アメリカでは日本よりも早い3月中旬くらいから本格的なロックダウンが始まって。本当に世界が終わっちゃった…みたいな雰囲気でした。外出できるのは一家で一人。スーパーマーケットはいつも長蛇の列だし、ゴム手袋をしていないとお店のなかに入れないし、そもそもお店のなかにも5人くらいしか入れない。早く日本に帰りたいけれど帰れない。やっと帰れたと思ったら日本で緊急事態宣言が出ていて、仲間はみんな仕事もなくてやることがないみたいな状況。いったいなにが起こっているんだろうという気持ちでした」と当時を振り返り、不安のなかにいたことを覚えていると語る。
「一方で、ダイヤモンド・プリンセスに関しては、日本側が受け入れる、受け入れないとか、船が日本にウイルスを持ち込んだみたいな話になっているわけじゃないですか。本当に難しいですよね…」と劇中の結城のような苦渋の表情を見せる。映画では、もしも自分だったら…と考えさせられる場面に何度も出くわす。「この状況で正義を定義するのはすごく難しいこと。でも結城たちには一人でも多くの人を救いたいという思いがあってひたすら目の前の人を救っていった。医者という仕事においてのある種の矜持みたいなものを見せてもらったと感じています。実際、モデルになった阿南先生をはじめ、あの現場にいた人たちは、できる限り人を救うのが自分の仕事だと一貫しておっしゃっている。普段はとてもユニークで、映画のほうがマイルドに描かれているくらい、かなり強烈な個性を持った方たちだけど(笑)、でも、そんなみなさんが映画を観て号泣したと聞いたら、やっぱり作ってよかったなと思いましたね」。