おわかりいただけただろうか…中村義洋監督と「オウマガトキFILM」ヒロが語り合う『ほん呪』『残穢』から『見える子ちゃん』まで
累計閲覧数9000万回、コミックの国内発行部数330万部を突破した泉朝樹の同名ホラー・コメディ漫画を、「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズ(99~)や『残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―』(16)などのホラー映画も手掛ける名匠、中村義洋監督が映画化した『見える子ちゃん』が公開中だ。
ある日突然、霊が“見える”ようになった女子高生みこ(原菜乃華)が、次々に現れるヤバすぎる霊たちを無視しながら、霊が憑いている親友のハナ(久間田琳加)を守るため、赴任してきた霊が張りついた教師・遠野善(京本大我)の謎に挑んでいく…という、青春映画とホラーの要素を併せ持った本作。このたびPRESS HORRORでは中村監督と、映画にも本人役で出演した心霊系YouTubeチャンネル「オウマガトキFILM」のヒロの独占対談を実施。中村監督の大ファンを公言するヒロが、ファンならではの視点で中村監督の演出の秘密に切り込んだ対談の模様を、たっぷりとお届けする。
本記事には、映画『見える子ちゃん』の展開を示唆する記述を含みます。直接的なネタバレは含みませんが、未見の方はご注意ください。
「なぜそうなっているのか、理由が分からないものに惹かますし、そういうものが一番怖い」(中村)
――まずはじめに、ヒロさんは本作をご覧になっていかがでしたか。
ヒロ「すごくおもしろかったです!ホラー的な見どころで言うと、原作に登場する霊がクリーチャー的な造形だったのに対して、映画ではかなりリアリティのある見た目になっていておどろきました」
中村「漫画と違って実写映画では、クリーチャータイプの霊を出し続けるのは相当キツいんですよね。出続けていると怖くなくなってしまうので。原作と同じかそれ以上の怖さを求めた結果、ああいう表現にしてみたんです」
ヒロ「リアリティのある霊を作り上げるために、どんなことにこだわりました?」
中村「『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズ(以下、『ほん呪』)で25年以上にわたって心霊系の投稿映像を観続けてきた経験が大きいですね。最初の数年は自分で構成も担当していましたが、そのあとは主にナレーターとして参加してきて。2023年の『劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100』で久々に構成を担当することになって、昔の勘を取り戻せてきた感じです。そうやってインプットしてきたものの積み重ねが今回の心霊描写には活きていますね。実際、撮影に入る前には自分が見てきた写真や動画をスタッフのみんなにも見せて、それに近づけるために結構話し合いをしました」
――霊が見えるようになってしまったみこを演じた原さんには、どのような演技指導をされましたか。
中村「まず原さんにお願いしたのはリアクションについてですね。本作では、“見える”状況が何層にもなっているから表現するのが難しいんです。つまり、映画を観ているお客さんはみこに霊が見えていることを知っているけれど、親友のハナやクラスメイトは彼女の能力を知らない。だから、現場で原さんには『いまのリアクションだと、クラスメイトに(霊が見えていることが)バレちゃってるよ』ってよく言ってました。そのさじ加減は、演出する側としても難しかったですね」
ヒロ「繊細なラインのせめぎ合いがあったわけですね」
中村「ええ。しかも本作には13~15ぐらいの霊が出てくるので、それぞれに違ったリアクションが必要になりました」
ヒロ「なるほど、生前と同じことをただ繰り返している霊もいれば、悪霊もいるし、相手によってリアクションの取り方も変わってくるわけですね」
中村「最初は『ほん呪』で観てきた霊を再現してぶち込めば、それだけで相当怖いものになると思っていたんです。でも、実際はそうはならなくて。10年前に『残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―』を撮った時も、ラスト付近で霊をガッツリ見せることにしたんですが、当時から『ラストが残念だった』という感想が本当に多かったし、原作者の小野不由美先生も『出るまでじゃないのかしら、怖いのは』と仰っていました。ところが今回は霊が最初からずっと出ているわけで。『霊がずっと映っている状態で怖くしてください』というオーダーだったから、さらにハードルが高かったんです」
ヒロ「板挟み状態ですね(笑)」
中村「映画『リング』での貞子は、テレビから出てきてもなお怖かったけれど、あれは映画のトーンがそうだったからやれたことで。『オウマガトキ FILM』の動画で霊がたまたま映り込んだ時も、佇んでいるか揺れる程度でしょう?」
ヒロ「そうですね」
中村「『ほん呪』の投稿映像の霊もカメラがパンしている時に一瞬映るだけということが多いから、動いていることってほぼないんです。なので、今回も観ている人たちが耐え得るギリギリの微妙な動きにしたんですけど、動きすぎていないか心配ですね」
ヒロ「僕は十分怖かったです。職員室のガラス越しに、遠野先生に憑りついている霊が最初に見えるところもビジュアル的に恐ろしかったし、奥の方に座っていた男性の霊が次のカットでは近くにいるという体育館のシーンでは結構ドキッとしました」
中村「小学生の頃に図書館に置いてある雑誌で、“病院の待合室で座っている心霊写真”というのを見て、そのイメージが潜在的に残っていたんです。体育館のシーンの男性の霊はその影響かもしれません。それと、『インシディアス』で部屋のなかに小っちゃな男の子の悪霊がいるシーンがあって。カメラの移動中に一瞬見えるだけなんだけど、その映っている尺がよかったんですよ。あれもずっと出ていたら怖くなかったような気がする」
ヒロ「僕たち、ホラー好きは大きい音で霊がド~ン!っていうのはまったく怖くなくて。そういう脅かしてくる表現には飽き飽きしているから、『見える子ちゃん』に出てくるような、なにを考えているのか分からない霊のほうが怖いです」
中村「まさに、ヒロさんのようなホラー好きに刺さるように作りましたからね。オウマガトキさんのサブチャンネルの『逢魔時ノ裏通リ』や『ゾゾゾ』といった心霊系YouTubeチャンネルから怖い写真や動画をピックアップして、失礼な話ですが、松竹梅で怖さのランクづけをしたんです(笑)。それらの霊のイメージや見え方は、大変参考にさせていただきました」
https://www.youtube.com/@noroinovideo_official
