大森元貴が超ロングインタビューで『#真相をお話しします』を語り尽くす!"鈴木”のキャラ解釈、ネットリテラシーへの持論、「天国」制作秘話まで

インタビュー

大森元貴が超ロングインタビューで『#真相をお話しします』を語り尽くす!"鈴木”のキャラ解釈、ネットリテラシーへの持論、「天国」制作秘話まで

「“恥のかき方”が大衆化されていることに、すごく違和感を覚えています」

避けて通れないのがネットリテラシーの問題。匿名性の暴力は、現在進行形でいまこの瞬間も誰かを傷つけている。最近だとミセスのなりすましの出現に対し、大森自らがはっきりと苦言を呈したことも記憶に新しい。

 ネットリテラシー、引いては”リテラシー”について持論を語る
ネットリテラシー、引いては”リテラシー”について持論を語る撮影/湯浅 亨

「なりすましに関しては、なにが楽しいのか全然わかりません。僕は世代的にデジタルネイティブですけど、例えば子どものころに友達と喧嘩をしたとか、思い出すとちょっとチクリとする、恥ずかしい経験って誰でもあるじゃないですか。それをいま、皆がネットでやっているというか。その“恥のかき方”が大衆化されていることに、すごく違和感を覚えています。匿名性の暴力や誹謗中傷に関しても、僕個人の話でいうとたまったもんじゃないです。顔も出さず、なんの責任も負わない人に、なんで好き勝手言われないといけないんだ?と。でも、その時点でフラットな関係性ではないので、僕にはあまり響かないし、意味を持たないですね」。

生配信チャンネル「#真相をお話しします」のチャンネル管理人は視聴者を煽り、投げ銭を促す
生配信チャンネル「#真相をお話しします」のチャンネル管理人は視聴者を煽り、投げ銭を促す[c]2025 映画「#真相をお話しします」製作委員会

ネットリテラシーについては、「個人的には少し変な言葉だなと思っていて」とも。「まさに“ふるはうす☆デイズ”の親たちがそうですが、ネットリテラシーを問うている作品でもある。“これはやってもいいけど、これはやったら終わりだよね”という、人としての最低限のリテラシー(知識、能力を活用する力)だから、そこに“ネット”がついたからってリテラシーが急に変わるわけじゃないじゃないですか?ネットリテラシーって本来人としてのリテラシーのはずで変な言葉だなあって思っています。正しい道徳心とは…なんてことを言っていると、やっぱり“説教映画”になっちゃいますね。でも本気で怒ってくれる人たちが減っているのは、リテラシー衰退の一因なのかなと。“正しく怒る”って非常に愛情が必要なことなので、僕はこの映画のことを宣伝期間中ずっと“抱きしめてくれるような映画”だという言い方をしていました。それはいまでも正しい気がしています」。

「匿名性を盾に、年齢や経験値をすべて一本化しようとするのは不可能なので、そこはSNSの進化に限界を感じるところ」

これから映画を観ようと思っている人もまだまだいるはずなので、鈴木の詳細はあえて避ける。だが鈴木という男を、どうしようもなく損ない、歪めてしまったある出来事に関して少しだけ語ってもらった。

警備室で知り合った桐山に、時折心を許した表情も見せる鈴木。公開まで”謎の男”として詳細は伏せられたままだった
警備室で知り合った桐山に、時折心を許した表情も見せる鈴木。公開まで”謎の男”として詳細は伏せられたままだった[c]2025 映画「#真相をお話しします」製作委員会

「いろいろな要因はあるとは思いますけど、鈴木があそこまでこじれてしまった理由は、正しい愛情と正しい説明を受けてこなかったからなんじゃないかな。それに自身の身体の不調がトリガーになり、悪い意味でいろんなことがピタッとはまってしまったと僕は解釈しています。なにか一つでも歯車が違うところに噛み合っていたら…。“バタフライエフェクト”じゃないけど、全然違ったものになったんだろうなと思う。それこそ、風磨くん演じる桐山に、もう少し早いタイミングで出会っていたらどうだったんだろう?とかね。風磨くんも言っていたんですが、桐山って鈴木に完璧に心を許しているじゃないですか。それは鈴木もわかっていて、絶対にうれしいはずなんです。だから最後の最後で、鈴木からしたら最悪な形で心がぶれてしまった。“あれ?なんで俺こんなことしてるんだっけ?”と」。

鈴木とはまったく異なるタイプの桐山が、SNSを肯定しているキャラクターであるということも、本作の複雑でおもしろい点だ。「そうなんです!それはこの作品の映画チームが強くこだわったところでもあって。SNS=悪だと言い切るのはあまりにも乱暴だと僕自身も思っているし、実際にSNSで救われた命もありますよね。SNSが持つ数字の強さ、拡散力は現実にあるものだからこそ、その使い方は正しくありたいというのはこの映画の大事なところだと思います。そしてそこを桐山が担っているのが最高だなと思う」。

菊池演じる桐山は、生配信チャンネルの投げ銭で金儲けをしようと、人生も懸ける
菊池演じる桐山は、生配信チャンネルの投げ銭で金儲けをしようと、人生も懸ける[c]2025 映画「#真相をお話しします」製作委員会

一方でネットが簡単に人の心を壊してしまうケースも。使い方によっては諸刃の剣となり得るのが、SNSなのだ。「僕らのファンでも、SNSの使い方がよくわからないまま使っているような、キッズと言われる本当に若い世代もたくさんいます。でもその子たちが悪いとはまったく思わなくて、それこそ“リテラシー”を教えるツールや人が必要だなと。匿名性を盾に、年齢や経験値をすべて一本化しようとするのは不可能なので、そこはSNSの進化に限界を感じるところですね。先ほども言った誹謗中傷の話で言うと、無自覚で人を傷つけてしまうのが一番の悪だとも感じています。同時に2025年現在、ミセスとして活動している自分はSNSの力を非常に借りています。だからこの映画もSNSは怖いよねっていう単純な話ではなく、結局人って怖いよねっていうことなんですよね。ネット=人であることを忘れないほうがいいと思う」。


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