『ペンタゴン・ペーパーズ』に『大統領の陰謀』、『スポットライト』も!『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』とあわせて観たい、歴史を変えたジャーナリズム映画たち

コラム

『ペンタゴン・ペーパーズ』に『大統領の陰謀』、『スポットライト』も!『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』とあわせて観たい、歴史を変えたジャーナリズム映画たち

声を上げられない被害者に寄り添い、性加害犯罪の実態を公にした人々の奮闘

告発の声を上げにくい犯罪に性加害があるが、その事実に報道が迫るドラマも少なくない。第88回アカデミー賞で作品賞に輝いた『スポットライト 世紀のスクープ』(15)では、カトリック教会の神父による児童への性的虐待を暴いたボストン・グローブ紙の取材班の奔走が描かれる。おぞましい事実が判明するたびに自分たちの家族のことを考えずにいられない、そんな記者たちの内面にも迫っており、ドラマとしてもおもしろい。

カトリック教会の神父による児童への性的虐待を暴いたボストン・グローブ紙の取材班の奔走劇『スポットライト 世紀のスクープ』
カトリック教会の神父による児童への性的虐待を暴いたボストン・グローブ紙の取材班の奔走劇『スポットライト 世紀のスクープ』[c]Everett Collection/AFLO

また『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(22)は、「#MeToo運動」の先駆けとなった性暴力報道の実話に基づいている。映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる女優らへの性加害を追及した女性記者たち。その奔走を通して、声を上げることのできなかった被害者たちの苦悩、業界の隠蔽体質、人権意識の低下などの現実が重く響いてくる。

声を上げることができない女性たちの苦悩、業界の隠蔽体質、人権意識の低下などが重く響く(『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』)
声を上げることができない女性たちの苦悩、業界の隠蔽体質、人権意識の低下などが重く響く(『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』)[c] 2022 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.


ほかにも、内戦下のサラエボに飛んだ英国人ジャーナリストの物語『ウェルカム・トゥ・サラエボ』(97)や、アイルランドの麻薬犯罪を告発して暗殺された女性記者の実話『ヴェロニカ・ゲリン』(03)、大量破壊兵器の保有を理由にイラク戦争に踏み切った米国政府の欺瞞を暴く『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』(17)、世界恐慌下のソ連のプロパガンダを暴こうとする英国人記者の姿に追った『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(19)など、このジャンルの作品は骨太で、とにかく歯応えがある。『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』とあわせて、ぜひチェックしてしみてほしい。

文/相馬学

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