ライアン・クーグラー監督のヴァンパイアホラー『Sinners』が『マイクラ』を撃破し北米初登場No. 1!
イースター週末となった先週末(4月18日から4月20日)の北米興収ランキングは、2025年トップクラスのメガヒットを続けている『マインクラフト/ザ・ムービー』(日本公開中)が公開3週目にして早くも首位から陥落するという番狂せが発生。もっとも、目まぐるしく首位のタイトルが入れ替わる状況こそ、北米興収ランキングらしくもあるのだが。
主役を飾ったのは、『クリード チャンプを継ぐ男』(15)やMCUの「ブラックパンサー」シリーズで知られるライアン・クーグラー監督が、盟友であるマイケル・B・ジョーダンとタッグを組んだホラー映画『Sinners』。1932年のミシシッピを舞台に、退役軍人である双子のスモークとスタックが地元に黒人コミュニティ向けの酒場を開設。そこにヴァンパイアが現れ人々に襲いかかるという物語だ。
初日から3日間の興収は4800万ドルで、祝日となった月曜日を含めた4日間では5580万ドルを突破と、事前の予測を大きく上回るスタート。これまでのクーグラー作品とはどれも毛色が異なるためあまり参考にはならないが(「ブラックパンサー」シリーズは例外中の例外であるし)、『クリード』のオープニング3日間との対比では162%と、10年間での彼の監督としての成長ぶりを顕著に窺うことができよう。
そもそもMCU作品を手掛けた監督が、その直後にアメコミ映画以外のジャンルを手掛けて北米初登場No. 1を飾った例は、『インクレディブル・ハルク』(08)の後に『タイタンの戦い』(10)を撮ったルイ・レテリエ以来15年ぶり(興行的成功という面ではスコット・デリクソンとタイカ・ワイティティがいるが)。しかもオリジナルホラーに挑んだ今作がもし興収1億ドルの大台を突破すれば、往年の人気シリーズの続編であった『クリード』から4作続けて興行的成功に導いたことになり、その職人監督としての地位は不動のものとなるのだが、その可能性は極めて高いと見える。
なにより目を見張るのは、その評価の高さ。批評集積サイト「ロッテン・トマト」では、批評家からの好意的評価の割合が98%で、観客からのそれは97%と、2025年公開のメジャー作品ではベスト。口コミで話題が広がっており、平日に入ってからの興行も順調。“ホラージャンル”と“上半期公開”という大きなハンデを二つ背負っているが、来年のアカデミー賞に向けた賞レースへの参戦も充分にありえそうだ。
一方、2位に後退した『マインクラフト/ザ・ムービー』は、週末3日間で興収4049万ドルと、オープニング週末から半減だった前週からさらに半減。『Sinners』との差は3日間で750万ドルだったものが、祝日を含めた4日間では960万ドルに広がっており、平日に入ってからは火曜日・水曜日共に500万ドルずつの大きな差をつけられてしまっている。
とはいえ火曜日の段階で、公開19日目にして北米累計興収3億5000万ドルという節目に到達。これはいままでに興収3億5000万ドルを突破した全71作品中27位という悪くないスピード感で、直近の作品と比べれば『ウィキッド ふたりの魔女』(日本公開中)より4日早い。しかしながらオープニング週末成績では肩を並べていた『バービー』(23)と比べると9日も遅い。『Sinners』との差も『バービー』との差も、主な要因は平日に数字を大きく落としているからに他ならない。これは単にファミリー向け映画の宿命なのか、それとも作品の勢いが失われつつあるからなのだろうか。
文/久保田 和馬