喜びも痛みも痛烈に伝わってくる血の通ったエールムービー!『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』に心奪われた映画のプロたちのレビューをお届け!

コラム

喜びも痛みも痛烈に伝わってくる血の通ったエールムービー!『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』に心奪われた映画のプロたちのレビューをお届け!

世間の目を気にせず自由奔放に生きるエネルギッシュな女性ジェヒ(キム・ゴウン)と、ゲイであることを隠し、周囲と距離を取りながら生きる寡黙な男性フンス(ノ・サンヒョン)。まもなく公開となる韓国映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』(6月13日公開)では、思いがけずある特別な契約を結んだジェヒとフンスの出会いから、2人が傷つき成長しながら大人になっていくまでが描かれていく。

【写真を見る】偶然出会ったジェヒとフンスは、特別な関係を築いていく
【写真を見る】偶然出会ったジェヒとフンスは、特別な関係を築いていく[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

昨年、大ヒット作『破墓/パミョ』(24)に出演すると、韓国のゴールデン・グローブ賞とも言われる百想芸術大賞で映画部門女性最優秀演技賞を受賞したキム・ゴウンと、韓国系移民家族の人生を追ったドラマ「Pachinko パチンコ」で存在感を発揮した新鋭ノ・サンヒョンがバディとなり、少しずつ心を通わせ、やがて魂でつながっていく若者の心の機微を表現。お互いのありのままを受け止め合い、かけがえのない存在になっていく2人が見つけた“最強の関係”に心震わされる。

韓国映画好きのみならず、映画ファンにとって“特別な一本”になるであろう『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』。アーティスト、女優の石野理子や、多くの映画を観てきた映画のプロたちはどんなふうに観たのだろうか?「キム・ゴウンは“ケミストリーの天才”である」「その美しい関係性をいつまでも観ていたい、2025年最良のバディムービー」「たった1人でもまるごと肯定してくれる理解者がいればいい」など、全8名から届いたレビューで、本作の魅力を深堀りしていく。

鑑賞後には、抑えきれない「会いたい」という心の叫びに耳を傾けたくなる

しだいに2人で過ごす時間が増えていく
しだいに2人で過ごす時間が増えていく[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

ソウルの喧騒の真ん中で育まれた、ジェヒとフンスのどこまでも純粋な友情。互いに、ありのままの自分でいられる、ソウルメイトのようなかけがえのない存在だ。時に激しく燃え上がり、時に清々しい風のように、偽善に満ちた都市の中で葛藤しながらも、2人は心の底から求めていたものへと着実に近づいていく。劇中で流れるmiss Aの「Bad Girl, Good Girl」が、2人のひたむきな物語を通して、より深く、より鮮やかに心に響き、温かい余韻を残す。鑑賞後には、愛と執着の境界が曖昧であったとしても、抑えきれない「会いたい」という心の叫びにきっと耳を傾けたくなるだろう。

(アーティスト、女優・石野理子)

より実在的で愛おしいものに増強する見事な映像化

身の危険が迫り、フンスに助けを求めたジェヒ
身の危険が迫り、フンスに助けを求めたジェヒ[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

原作小説で蠱惑的に描かれた主人公2人の人物像と関係性を、的確なアレンジとオリジナル要素を交えつつ、より実在的で愛おしいものに増強する見事な映像化。男性社会のなかで真っ先に餌食となる“弁えない”女性とゲイ男性の傷だらけの日常は見覚えがあるゆえにとても苦しいが、そのアウトサイダー2人の連帯で生まれる圧倒的なパワーに観る者がどれほど勇気をもらえるか。特筆すべきは値千金の魅力を放つキム・ゴウンとノ・サンヒョン。2人の化学変化が世俗的な生活のなかで編まれる友情に驚きの説得力を宿している。映画のなかでクィアを描くことがどのような好影響を及ぼすかについての俯瞰的な言及も感動的で、つくり手の明確な意志を感じる点も頼もしい。

(映画ライター・ISO)



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