大森時生&山中瑶子が『サブスタンス』の虜に!「成長物語であり人生」「切ない気持ちになりました」

大森時生&山中瑶子が『サブスタンス』の虜に!「成長物語であり人生」「切ない気持ちになりました」

第77回カンヌ国際映画祭で脚本賞に輝き、第97回アカデミー賞で作品賞や監督賞、主演女優賞など5部門にノミネートされメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した『サブスタンス』(5月16日公開)。本作のPRESS HORROR独占試写会が4月18日に東京・飯田橋の神楽座にて開催され、テレビ東京プロデューサーの大森時生と映画監督の山中瑶子がゲストとして上映後のトークショーに登壇。MCはホラーマニアとしても知られる声優の野水伊織が務めた。

1990年代に一世を風靡したデミ・ムーアが、美と若さに執着する元人気女優を演じた本作。50歳を迎え、容姿の衰えを理由に仕事が減少した女優のエリザベス・スパークル(ムーア)は、“サブスタンス”という再生医療に挑戦する。手に入れた薬を注射するやいなや、エリザベスの上位互換体であるスー(マーガレット・クアリー)が出現。若さと美貌、そしてエリザベスの経験を武器にたちまちスターダムを駆け上がっていくスー。一つの心をシェアする2人には“1週間ごとに入れ替わらなければならない”という絶対的なルールがあったのだが、スーはそれを破ってしまい…。

ホラージャンルでありながらエンタメ性の高い作り込みに驚嘆していた大森時生プロデューサー
ホラージャンルでありながらエンタメ性の高い作り込みに驚嘆していた大森時生プロデューサー

昨年夏に東京で開催され約7万人を動員した「行方不明展」や、フェイクドキュメンタリー番組「TXQ FICTION」の「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」などでホラーファンから大注目を浴びる大森は「この映画はどうやって終わるのだろうか?と思わせながら、自分の想像を完全に超えたところに到達したのがすばらしかった」と、狂気に満ちた新種のホラーエンタテインメントを大絶賛。

ホラーが苦手だという山中監督「それでも嫌ではなかった」と、すっかり本作の虜に
ホラーが苦手だという山中監督「それでも嫌ではなかった」と、すっかり本作の虜に

一方、『ナミビアの砂漠』(23)でカンヌ国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞した山中監督は、「自分の想像を軽々と超えてきて、最後は泣いちゃった。でもなぜ自分が泣いているのかわからなくて…。スターもモンスターも対等に扱われない点では同じなんだな、というところに切ない気持ちになりました」としみじみ。この日の試写会で2度目の鑑賞をしたという山中監督。「ストーリーを知っていて心に余裕もあるかなと思ったのですが、そういった猶予すら与えないほど支配力がすごい」とふたたび圧倒されたことを告白した。

【写真を見る】名女優デミ・ムーアが、“元人気女優”役で完全復活!
【写真を見る】名女優デミ・ムーアが、“元人気女優”役で完全復活![c]2024 UNIVERSAL STUDIOS

広義のホラージャンルでありながらも、登場人物の心理に深く斬り込み、さまざまなメッセージが含まれている本作。大森は「正直、ホラーという視点では観ることができなかった」と明かし、「ジャンルでカテゴライズするとしたらなんだろうかと迷ってしまうぐらいエンタメしていました。デヴィッド・クローネンバーグ作品のように、アートや個人の話になりがちなジャンルだけど、本作は1人で抱え込まずにみんなを巻き込んでいく。ホラーってこんなにエンタメに昇華できるんだという発見がありました」と語る。

また、ホラー映画が苦手だという山中監督は「私は怖いのも痛いのもびっくりするのも苦手だけれど、それでも嫌ではなかった」と大満足の表情を浮かべ、「最後の30分は『もっとちゃんと見たい!』と思わせるのだから不思議。最後まで付き合うぞ!というスポ根感があって、元気とパワーをもらえるし、爽快感すらありました」と、すっかり本作の壮絶でありながら独特な世界観にハマっている様子で熱弁をふるっていた。

デミ・ムーアは本作の演技でゴールデン・グローブ賞を受賞!キャリア初のオスカー候補に
デミ・ムーアは本作の演技でゴールデン・グローブ賞を受賞!キャリア初のオスカー候補に[c]2024 UNIVERSAL STUDIOS

さらに大森は「(ある男性と)食事に行こうかどうか迷うシーンの演技が実は一番すごかったと思っています」と、ムーアの表現力に唸り、山中監督は「この映画でなにを描きたいのか、それを理解していないとできない芝居を全員がしている。滑稽さを理解した上で、自ら滑稽になっている。この映画と同じことをやろうとするのは難しい。あそこまで曝せないと思うから。チーム全員がやるべきことを理解して映画づくりに挑んでいたはずです」と、作り手の目線から本作のキャスト&スタッフを激賞。

スターダムを駆け上がっていくスーだったが、彼女は重要なルールを破ってしまい…
スターダムを駆け上がっていくスーだったが、彼女は重要なルールを破ってしまい…[c]2024 UNIVERSAL STUDIOS

MCの野水より「本作を一言で表すならば?」と問われると、山中監督は「ご自愛ください。自分をケアしよう」と評する。そして「まるで二日酔いの辛さを大きくしたようなところのある映画なので、先のことを考えて自分を大事にしようというようなメッセージを受け取りました」と解説。大森も「成長物語であり人生。ラストを観た時に、人生ってこんなものなのかな、と思いました」とコメントした。


『サブスタンス』は5月16日(金)より公開される
『サブスタンス』は5月16日(金)より公開される[c]2024 UNIVERSAL STUDIOS

イベントの最後に「大衆がこぞって観るジャンルではないかもしれないけれど、こぞって観に行ってほしい。それくらい良くできている映画です」とアピールする山中監督に、大森も「こんなに変でこんなにおもしろい映画はあまりない。ここ日本でもヒットしてほしいですし、僕も改めて映画館で2回目を観るつもりです」と宣言。それぞれ本作の大ヒットを祈願していた。

文/久保田 和馬

※記事初出時、表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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