ゲームファンも盛り上がるポイント満載!『マインクラフト・ザ・ムービー』大人も子どももワクワクできる“創造”のおもしろさを描く

コラム

ゲームファンも盛り上がるポイント満載!『マインクラフト・ザ・ムービー』大人も子どももワクワクできる“創造”のおもしろさを描く

ジャレッド・ヘス監督とマイクラの関係

熱い握手を交わすスティーブとギャレットを、怪訝な顔で見つめるドーン(ダニエル・ブルックス)
熱い握手を交わすスティーブとギャレットを、怪訝な顔で見つめるドーン(ダニエル・ブルックス)[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

これまで、ゲームでプレイヤーたちが操っていたデフォルトキャラである“スティーブ”を演じるのは、『スクール・オブ・ロック』(04)や「ジュマンジ」シリーズの人気俳優ジャック・ブラック。監督を務めるジャレッド・ヘスは、2006年のコメディ映画『ナチョ・リブレ 覆面の神様』ですでにブラックとコンビを組んでいるのだが、ヘスの長編デビュー作はボンクラ男子映画の傑作『ナポレオン・ダイナマイト』(04)。実はこの作品、マイクラとも奇妙な関係がある。

いまはブロック玩具「レゴ」のマイクラ版「レゴ マインクラフト」が発売されているが、実はマイクラのリリース前にもレゴとマイクラとのコラボという幻のプランがあった。そのプロジェクト名は「Project Rex Kwon Do」。これは『ナポレオン・ダイナマイト』に出てくる作戦に由来して付けられたものだったという。日常のなかでファンタジー世界を夢想する…というナポレオンの日常は、マイクラの世界創造の理念に通じているだろうし、『マインクラフト/ザ・ムービー』でも、転送者の一人であるヘンリー少年(セバスチャン・ハンセン)が、一心不乱に授業中にファンタジー世界のイラストを描いているシーンなどからは、『ナポレオン・ダイナマイト』風味を感じることができる。

転送者たちに、とんでもない敵が襲いかかる!?
転送者たちに、とんでもない敵が襲いかかる!?[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

実際、今回の『マインクラフト/ザ・ムービー』も『ナポレオン・ダイナマイト』のように、発明マニアながら役に立つどころか逆に町を破壊してしまうヘンリーなど、登場人物たちの現実世界でのパッとしなさをちゃんと描いている。なかでもスター気取りの元ゲームチャンピオン、ギャレット役ジェイソン・モモアの演技は必見だ。「アクアマン」シリーズなどでおなじみの彼だが、超人ではなく一般人(しかもボンクラ)役は珍しいのではないだろうか。映画全編を通じてブラック演じるスティーブとモモア演じるギャレットが全力で揉めたり仲良くしたりと、まるで彼ら2人のショートコント集を見ているようで、マイクラに明るくない人でも楽しめるはずだ。また、本作ではゲーム世界に入った人間だけでなく、その逆である“人間世界にやってきたゲームキャラ”も描いているのは意外にも新しいポイントかもしれない。

ゲーム内で得たものを現実でも活かす“成長譚”としての側面

ナタリー(エマ・マイヤーズ)の弟で、発明好きのヘンリー(セバスチャン・ハンセン)。彼の創造力がカギに!?
ナタリー(エマ・マイヤーズ)の弟で、発明好きのヘンリー(セバスチャン・ハンセン)。彼の創造力がカギに!?[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

ゲーム映画、特にゲームに現実の人間がジャックインする作品特有の問題として、最終的にまるで口うるさい親が子どもに「ゲームしてないで外で遊びなさい」とでも言うような説教臭いテーマになりがち…ということがある。本作はそのあたりも大丈夫。日ごろの夢想や創造性がゲーム内で生かされ、ゲームから戻ってもあちらで成長した自分のまま、個性を発揮して生きていくという成長物語になっており、青春映画としての肝はしっかりと押さえている。

ほかにも、昨今のゲーム映画では、そのゲームの有名な配信者が声を当てるのがハリウッドでは増えてきているが、日本でも同様に国内のマイクラ配信者たちが吹替えを担当している。これもプレイヤーにとっては楽しみの一つだろう。そして、ゲーム「マインクラフト」のほうでも『マインクラフト/ザ・ムービー』の名シーンをプレイヤーが遊ぶことができるシナリオ集が早くもリリースされている。映画を観たあとにすぐ追体験できるのはいままでになかった試みだろう。

転送されてきた4人以外はすべて四角でできている
転送されてきた4人以外はすべて四角でできている[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

マイクラではすでにソニックにゴジラ、スター・ウォーズにハローキティまで、それぞれの世界を楽しめる追加コンテンツが多数リリースされている。同じブロック世界の元祖レゴが「LEGO(R) ムービー」や「レゴバットマン」などの映画を作っているように、“マインクラフト映画”の今後のさらなる展開が、実に楽しみである。


文/多田遠志

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