『パラノーマル・アクティビティ』に『クローバーフィールド』『プレゼンス 存在』『HERE 時を越えて』などなど…様々な“視点”を用いた映画たち

『パラノーマル・アクティビティ』に『クローバーフィールド』『プレゼンス 存在』『HERE 時を越えて』などなど…様々な“視点”を用いた映画たち

幽霊目線で孤独な少女を見守る『プレゼンス 存在』

「オーシャンズ」シリーズのスティーヴン・ソダーバーグが監督、「ミッション:インポッシブル」シリーズを手掛けたデヴィッド・コープが脚本を務める『プレゼンス 存在』。アクションからドラマまで幅広いジャンルを手掛けてきたソダーバーグだが、意外にもホラーを撮るのは今回が初めて。しかも、“幽霊目線”の一人称視点である。物語はある屋敷に4人家族が引っ越してくるところから幕を開ける。この家族は崩壊寸前で、特に10代の少女クロエ(カリーナ・リャン)は仲のよかった友人を亡くしたばかりで心が不安定な状態にあった。しかし、この屋敷には住人がもう一人。一家の行動をじっと見つめ続ける“それ”は、家族からも孤独を深めるクロエにそっと寄り添うのだった。

“幽霊目線”の一人称視点で展開される『プレゼンス 存在』
“幽霊目線”の一人称視点で展開される『プレゼンス 存在』[c] 2024 The Spectral Spirit Company. All Rights Reserved.

“それ”が物を動かし、コップのジュースをこぼした時に住人が見せる驚いた表情、クローゼットを怪訝そうに調べる様子が映しだされ、まるで幽霊と一体になったような感覚が味わえる。これらの映像はソダーバーグ自らがカメラを構え(別名義のピーター・アンドリューとしてクレジット)、フワフワと漂う幽霊の動きを表現することで生みだされており、没入できる劇場環境であれば臨場感もより増していく。“それ”はどうしてクロエを気にかけるのか?様々な解釈ができる衝撃のラストシーンにも期待してほしい。

有史前から現在までを定点映像で描いた壮大な年代記『HERE 時を越えて』


HERE 時を越えて』は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズや『フォレスト・ガンプ 一期一会』(94)、『Disney's クリスマス・キャロル』(09)など、“時間”がテーマの作品を数多く手掛けてきたロバート・ゼメキスが、有史前から現在までを定点映像で描いた壮大な年代記。カメラが置かれているのは、現在のフィラデルフィアのとある場所。この地で生きた者たち―恐竜からネイティブ・アメリカン、そして数組のアメリカ人家族―のドラマが小気味よいリズムで映しだされる。

ホームビデオを見ながらの団らん風景(『HERE 時を越えて』)
ホームビデオを見ながらの団らん風景(『HERE 時を越えて』)[c]2024 Miramax Distribution Services, LLC. All Rights Reserved.

メインはこの場所に建つ家で家族を作ったアル(ポール・ベタニー)と妻のローズ(ケリー・ライリー)、そして2人の息子リチャード(トム・ハンクス)とその妻マーガレット(ロビン・ライト)の物語。彼らを中心とした様々な人々の悲喜こもごもを通し、家族や生きることのすばらしさを説いている。それぞれの家族を時代順ではなく、時間を行き来しながら新たな命の誕生や最期の別れといった人生の岐路を並べ、つながりを描くなど、凝った構成も秀逸。太古の大地から住宅地まで舞台を次々と入れ替え、トム・ハンクスたちキャストを若者から老人へと変えるなど視覚効果を駆使した映像にも注目してほしい。ゼメキスらしい究極の時間旅行が堪能できる作品だ。

視点を変えるだけで、おもしろさも拡大していくことを証明するこれらの映画たち。公開中の『プレゼンス 存在』、『HERE 時を越えて』とあわせてチェックしてほしい。

文/神武団四郎

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