カンヌで監督デビューも!不思議な色気をまとう“It Boy”な俳優『ベイビーガール』ハリス・ディキンソンから目が離せない
いま最も気になる俳優といえば、この人。『ベイビーガール』(3月28日公開)でニコール・キッドマン演じる女性CEOの満たされない性生活に加担するインターンに扮して、得体の知れない魅力を振り撒くハリス・ディキンソンだ。出会い頭にヒロインが覆い隠している欲求不満の本質を見抜き、彼女が求めているものをきっちりと与えていく冷徹な姿勢に震え、魅了される女性観客は多いに違いない。
キャッチフレーズの“It Boy”を体現
ディキンソンにとって今回のインターン役は、第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『逆転のトライアングル』(22)で演じた、孤島に流れ着いたクルーズ船爆破事件のサバイバーたちが直面する新たなヒエラルキーにおいて、性の道具と化していくモデル役とは正反対だ。しかし、どちらもセックス絡み。
欧米の一部メディアはそんなディキンソンの扱われ方を指して、“It Boy”と表現している。もともとは無声映画時代のハリウッドで人気を博したセックスシンボル、クララ・ボウのキャッチフレーズ(「It Girl」)で、Itとは色気を意味するワードだが、It Boyは有望な新人、または、年上の女性を魅了する若い男性の俗称として使われている。まさに、いまのディキンソンそのもののようなキャッチフレーズではないか!?
メガヒットシリーズからインデペンデントまで幅広く出演してきたユニークなキャリア
ディキンソンのキャリアはユニークだ。初主演作『ブルックリンの片隅で』(17)では、異性の恋人がいながら男性に惹かれていくブルックリン在住の青年を演じてインデペンデント・スピリット・アワードの主演男優賞にノミネート。以降、『マレフィセント2』(19)での王子役や『キングスマン:ファースト・エージェント』(20)のレイフ・ファインズ扮する公爵の一人息子役など、ハリウッドのメガヒットシリーズに参加してきた。
かと思えば、『ザリガニの鳴くところ』(22)では一転、家族はなく、学校にも通えない孤独なヒロインに襲いかかる身勝手で凶暴な青年を怪演してファンに衝撃を与える。でもそれは、ネガティブなイメージではなく、本来、ディキンソンが持っている個性が役に活かされたとも取れるところが、彼の異色たる所以だ。
『アイアンクロー』(23)で演じた不幸なリンクから抜けだせないプロレスラー一家の三男役は、もちろん儚げで美しかった。いま、セクシュアルマイノリティからフェアリーテール、そして悪役、またはプロレスラー役を経由して、セックスと女性の解放というホットなテーマにもチャレンジできる振れ幅勝負の若手俳優なんて、そうはいないのだ。