「ガンニバル」は「自分の人生における財産」。柳楽優弥と笠松将が振り返る、圧倒的熱量に包まれた撮影の日々

インタビュー

「ガンニバル」は「自分の人生における財産」。柳楽優弥と笠松将が振り返る、圧倒的熱量に包まれた撮影の日々

「大悟と恵介には、意外と似ているところがあるかもしれませんね」(柳楽)

――大雑把な聞き方になってしまいますが、シーズン2の全8話中で大悟と恵介が同じ画角に収まっている場面から、お二方がレコメンドするシーンを挙げるとすると?

それぞれの立場上、相容れることのなかった大悟と恵介だが…
それぞれの立場上、相容れることのなかった大悟と恵介だが…[c] 2025 Disney

柳楽「僕は大悟と恵介が対峙するシーンですね。それまでは別々のところにいて、無線を通したり、人を介してコミュニケーションをしていた2人が対面を果たすことで、物語が加速していくのを感じてもらえるんじゃないかなと思います。でも、本音を言えばどの場面も…全編を通じて没入していただけたら(笑)」

笠松「確かに。でも、強いて選ぶなら物語の最後に恵介が迎える佳境の場面ですね、やっぱり。あのシーンには『ガンニバル』という作品そのものをはじめ、柳楽さんや片山さんが僕に与えてくれたものがすべて凝縮されているように感じたからなんです。撮影自体が終盤だったこともありますし、お互いに向き合った時…阿川大悟として目の前にいながらも、ひとつひとつの仕草や表情だったり声が柳楽さんご自身のものとして伝わってきた、と言いますか。そんな感じで個人的な理由になってはしまうんですが、僕にとってとても大切なシーンになりました」

――あのシーンで恵介が最後に口にするひと言から感じられる余白に、個人的にはすごみを感じました。あれは台本通りだったのでしょうか?

笠松「いや、あのくだりは本番ギリギリまで片山さんと探っていったんです。『恵介として、ここでなにを言うと思う?』って、いろいろな言葉を考えてみたんですけど、すぐには言葉が出てこなくて。で、模索して、あのひと言にたどり着きました。ただ、よくよく考えてみると芝居のことについて片山さんとガッツリ話したのって、あの時が初めてだったなと。あんまり細かく演出されるというよりも、周りの人たちを動かしてくださることで恵介のキャラクターを浮き立たせてくださっていたので、そういう意味でも思い出深いシーンになったな、と」

片山慎三監督に全力でぶつかっていったという柳楽
片山慎三監督に全力でぶつかっていったという柳楽撮影/黒羽政士

柳楽「僕も片山さんとたくさん話したという感じではなかったんですけど、自分が芝居をしたあとに『事前に話したほうがよかったな』と思いたくないタイプなので、その都度思ったことや感じたことは言葉にして伝えてはいたんです。監督を信頼しているからこそ伝えさせてもらっていたので、どういうリアクションをされたとしても受け入れようとは考えていました」

――ちなみに大悟と恵介って、もしも違う世界線で出会っていたとしたら、結構気の合う仲間同士になれたんじゃないかと思ったりもするんですが、お二方はどう解釈されますか?

柳楽「意外と似ているところがあるかもしれませんね。ただ、プラス極同士みたいな感じで、近づこうとすると反発する力が働いてしまうという…。そのぶん、力を合わせるとものすごく強くなる」

笠松「大悟と恵介の関係性って、僕自身がふだん送っている日常生活ではなかなか気づきづらいものでつながっていると言いますか、一歩踏み込んでみないとわからないような感覚なのかなと思いました。それを自分自身に置き換えてみて、ご一緒する監督さんや俳優さんに対して一歩踏み込んでいく勇気を持て、といったアドバイスを与えてもらったような気もしているんですよね」


【写真を見る】「この作品を経験できて本当によかった」。「ガンニバル」を通じ強い絆で結ばれた柳楽優弥と笠松将を撮りおろし
【写真を見る】「この作品を経験できて本当によかった」。「ガンニバル」を通じ強い絆で結ばれた柳楽優弥と笠松将を撮りおろし撮影/黒羽政士

柳楽「クライマックスで、それこそ“覚悟”を表明するようなセリフを恵介が言うんですけれど、僕はその言葉がすごく好きなんです。いまの時代って、いろいろなことがニュースタンダードになっていっているように僕は感じていて、これまで“よし”とされてきたことも、これからは変わっていくのかもしれないなと、ふだん生活していて思うことが結構あるんですよ。いったいなにが正しいのか探りながら生きているような感覚が、多かれ少なかれ誰しもあると思うんですが、『ガンニバル』は供花村という地域を舞台にいまの日本を縮図的に描いているようにも捉えていて。わりとセンセーショナルなテーマや描写を話題にしていただいている作品ですが、普遍的なテーマを描いている作品なんじゃないかって、改めて感じさせられました」

取材・文/平田真人

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