名曲「虹の彼方に」やミュージカル「ウィキッド」のヒット!映画史に残る『オズの魔法使』の衝撃をプレイバック
CGが存在しない時代に生まれた驚異の映像世界
86年も前の作品ながら、物語、映像共にいま観てもまったく魅力を失っていないのが『オズの魔法使』の奇跡。当時の観客の衝撃と感動は、どれほどのものだったのか…。現在はリマスターされたとはいえ、オズの国の大スケールのセットとカラフルな色使い、空を飛ぶフライングモンキーの怖さまで、CGが存在しなかった時代にここまでの映像が作られたことには驚くばかり。オズのシーンはテクニカラー、現実のシーンはモノクロという演出も、当時は斬新だった。
マイケル・ジャクソン出演の『ウィズ』にミュージカル「ウィキッド」など大きなブームに
映画史に残る名作というだけでなく、『オズの魔法使』自体が一つのカルチャーとなった。ドロシーがオズの国に来た時の「We're Not in Kansas Anymore(もうここは、カンザスじゃない)」というセリフは、その後、「セックス・アンド・ザ・シティ」など数々のドラマや映画で引用され、アメリカでは未体験の場所を訪れた際の“日常用語”として認識。舞台を現代の都会に翻案し、オールアフリカ系のキャストで上演したミュージカル「ザ・ウィズ」、同作をマイケル・ジャクソン出演(案山子役)で映画化した『ウィズ』(78)など、派生作品も数知れず。その流れで、ドロシーのカンザス帰りを助ける“善い魔女”グリンダを主人公にしたミュージカル「ウィキッド」が作られ、今回の映画につながった。
現代の人々に極上の魔法をかける『ウィキッド ふたりの魔女』
前日譚である『ウィキッド ふたりの魔女』では、魔法使いのオズが重要な役割を果たすほか、ドロシーと案山子、ブリキ男、ライオン、さらにフライングモンキーがちらっと登場するなど、『オズの魔法使』への目配せもたっぷり。ミュージカル場面の演出に、『オズの魔法使』を作った時代のMGMが手掛けたミュージカル映画へのオマージュが込められていたりと、時代を超えて受け継がれた部分がいくつも発見できる。
お嬢さまキャラのグリンダ(アリアナ・グランデ)とグリーンの肌を持ち孤独に生きてきたエルファバ(シンシア・エリヴォ)が、魔法と幻想の国オズにあるシズ大学で出会い、ぶつかり合いながらも友情を深めていくストーリーが展開。のちに“悪い魔女”として人々から恐れられるエルファバと、“善い魔女”へと成長するグリンダという2人の主人公のエモーショナルな運命が、オズの国の心ときめく映像美、映画版ならではの圧倒的なミュージカルシーンと共に映しだされていく。
86年前、『オズの魔法使』を観た人々がどれほど驚愕したかは想像できない。ただ一つ言えるのは、この『ウィキッド ふたりの魔女』も、いまを生きる我々に極上の魔法をかけ、味わったことのない感動と興奮を届ける…ということだ!
文/斉藤博昭