あのミッキーが殺人鬼に…こんな作品どうして作れた?映画にまつわるパブリックドメインのあれこれ
世界中で愛される、みんな大好きミッキーマウスが殺人鬼だったら…そんなぶっ飛んだ構想を実現してしまったホラー映画『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』が3月7日より公開中だ。夢の国の人気者が悪夢をもたらす本作。どうしてこんな映画が実現してしまったのか?その理由をここで説明していきたい。
ゲームセンターがあの人気者の手により恐怖のアトラクションに…
21歳の誕生日を迎えるアレックス(ソフィー・マッキントッシュ)は、バイト先のゲームセンターで残業を頼まれ、夜遅くまで働くことに。一人きりの店内で不気味な人影を目撃し恐怖心を募らせるが、旧友たちによる誕生日祝いのサプライズパーティーだったことを知る。
しかし、ゲームに興じる楽しい時間も束の間、アレックスたちの前にどこか挙動がおかしい”ミッキー”が出現。出入り口が封鎖された密室のゲームセンターで一人、また一人と仲間たちが血祭りに上げられていく。
トンデモ映画の制作を可能にした名作のパブリックドメイン化
冒頭から某SF映画をパロったオープニングクロールで「この映画はディズニーとはなんの関係もありません」と繰り返し説明されるように、ディズニーからは存在を黙殺されている本作。では、なぜこんなホラーができてしまったかというと、作品内で丁寧に説明されているように『蒸気船ウィリー』(28)の権利が2023年末で切れて“パブリックドメイン”になったからだ。
パブリックドメインとは著作権や特許権などの保護期間が終了した知的財産のこと。『蒸気船ウィリー』は権利切れが迫った1998年に誕生した「著作権延長法」の恩恵を受けて保護期間が延びたが、初登場から95年、2024年についにパブリックドメイン化。『蒸気船ウィリー』に登場する“初代”ミッキーももろもろの条件(ディズニー公式の作品だと勘違いさせないことなど)さえクリアすれば、自由に利用できるようになったのだ。
これに伴い、ネットには初代ミッキーを題材としたイラストが散見するなど、早くもミッキーを利用した新たな二次創作物が誕生。『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』もいち早くホラー映画として制作され、マッド化したミッキーが『蒸気船ウィリー』のメロディを口笛で吹くなど、原作で遊び倒しているのだ。
これまでにも著作権切れで生まれてきた作品は多数!
この著作権切れからの二次創作という流れは『蒸気船ウィリー』に限ったことではなく、これまでも多くの作品で行われてきた。近年では、A・A・ミルンによる児童文学「クマのプーさん」が2022年にパブリックドメイン化し、プーとピグレットがクリストファー・ロビンに襲いかかるホラー『プー あくまのくまさん』(23)が話題になったばかりだ。
そもそも、ディズニーも名作の二次創作で恩恵を受けており、「シンデレラ」や「白雪姫」といったグリム童話や「人魚姫」に「ピノッキオの冒険」など、著作権が切れた数々の童話、児童文学を翻案してヒット作を生みだしてきた。