安田現象が映画『メイクアガール』に込めた願い「夢との向き合い方についての問いかけをしたかった」

安田現象が映画『メイクアガール』に込めた願い「夢との向き合い方についての問いかけをしたかった」

「自分の作品に“らしさ”があるとすれば、語り口」

積み重ねていく先に自分の目指すアニメーション作家像がありそうと語った安田監督
積み重ねていく先に自分の目指すアニメーション作家像がありそうと語った安田監督撮影/黒羽政士

大好きな作品は「響け!ユーフォニアム」シリーズだという。「一生観続けるレベルでめちゃくちゃ好きです。新作アニメには必ず目を通しますが、気づけばいつも戻ってきていて、本当に何回観たことか…。人間関係の裏側が、あとから見えてくるのがすごくよくて。実は最初は嫌いだと思ったキャラクターが、いまでは一番好きになっています。僕が大好きなのは優子ちゃん。初見ではなんて身勝手な悪い女なんだ!と思ったけれど、コイツほど人のために動けるヤツはいないって境地になってから、彼女のシーンは涙なしでは観られなくなっています(笑)」とお気に入りアニメの魅力を力説。

明と0号は順調に恋を育んでいくかのように思えた
明と0号は順調に恋を育んでいくかのように思えた[c]安田現象/Xenotoon・メイクアガールプロジェクト

映像表現で魅力を感じているのは、アニメ「BEASTARS」などを手掛けるCGのアニメーション会社、オレンジで「ゼロをイチにする力、3Dアニメとしての進化という点で勉強になることがすごく多いと感じています。そのもの“ならでは”のアクション表現が魅力的です」とのこと。「日常芝居の観点で言うと、アニメよりもモノクロ映画が受け取りやすい」そうで、最近は昔の映画に触れる機会を意識的に増やしている。「70年代から60年代、50年代と遡っていくなかで、黒澤明映画に触れた瞬間に『あーー!天才すぎる!』って衝撃が走りました。これまでも触れたことはありましたが、改めてしっかりと観てみると、みんながすごい映画だというのも納得しかないし、最近見なくなった古めの演出も、実はいまでも使えるんじゃないかという再発見も多くて。特に刺さったのは『天国と地獄』。隣の芝の青さに打ち震えている場合ではない、ちゃんと自分のなかで戦わなくてはいけない。そんな思いが込み上げてきた作品でした」と黒澤作品からの刺激や学びも明かした。

自分の心はホンモノなのか、それとも作られたニセモノなのか…
自分の心はホンモノなのか、それとも作られたニセモノなのか…[c]安田現象/Xenotoon・メイクアガールプロジェクト


目指すアニメーション作家像は、これから見つけていくことになりそうなのだとか。「画作り発のアニメーション作家ではないぶん、画風に関してはあまり意識していません。自分の作品に“らしさ”があるとすれば、語り口になってくると思います。なにかを得るならなにかを失うようなバランス、完全なるハッピーエンドではない、そんなバランスを意識しています。これはニトロプラスに所属していた時に出会い、1人で作るようになってからも大切に使わせてもらっている、自分にとっての思想のようなものです」とし、「制約のなかで生まれる表現がたくさんあることも経験したので、積み重ねていく先に、画としても自分らしさを見つけられたらと思っています」と展望も語った。

取材・文/タナカシノブ

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