桜田ひよりが『星の教室』の夜間学級で見つけた一歩踏み出す勇気と学びの尊さ「人は、大人になってからでもいくらでも挑戦できる」
横溝正史の小説を映画化した『犬神家の一族』(76)にはじまり、『セーラー服と機関銃』(81)、『時をかける少女』(83)、『Wの悲劇』(84)など、数々の名作を世に送り出し続け、メディアミックスという手法で日本映画界に旋風を巻き起こした、角川春樹。その“最後の総監督作品”となる『星の教室』が、11月6日(金)に公開される。
本作は、高田郁の同名小説を『わたしは光をにぎっている』(19)、『静かな雨』(20)の中川龍太郎監督が映画化した人間ドラマ。主人公は、いじめがきっかけで「中学中退」のまま二十歳を迎えたさやか。大阪の下町にある夜間学級で、年齢も国籍も異なる“先輩”たちと出会い、止まっていた時間が少しずつ動き出していく。さやかを演じた桜田ひよりに、役と向き合った日々と、世代を超えた共演者たちと過ごした時間を振り返ってもらった。
「親子だからこそぶつかってしまう場面にさやかの本心が表れている」
舞台は2001年1月、大阪の下町。中学時代、いじめがきっかけで不登校になったさやかは、卒業を拒否して「中学中退」を選んだ。二十歳になった彼女は、レンタルビデオ店でアルバイトをするなかで図らずも封印してきた自身の過去と向き合うことになる。
山田洋次監督の『学校』(93)を通じて、“夜間中学”の存在を知ったさやかは、自らも夜間学級の門をくぐる決心をする。そこでは、様々な事情で義務教育を終えられなかった大人たちや、外国にルーツを持つ人々が笑顔で学んでいた。
「学校に行けなかったのは自分だけではない」と気づいたさやかは、先生やクラスメイトに支えられ新たな道を歩き出し、学ぶことを諦めない同級生たちもまた、ささやかな幸せを掴んでいく。
桜田は、あまり多くを語らないこの主人公をどのような人物として受け止めたのか。
「これまでも様々な作品を通じて、幅広い役を演じさせていただいてきましたが、そのなかでも今回演じたさやかは、特に感受性が豊かな子だったなと思っています。人の気持ちにとても敏感で、物事を簡単に受け流せず、深く考え込んでしまう女の子だなという印象がありました。ただ、そういう性格の子であるからこそ、人の気持ちに寄り添えるし、共感性も高い。本当に素敵な女性だなと感じましたね」
世間体を気にするさやかの母(仙道敦子)は娘の挫折を恥じ、父(萩原聖人)も2人の緊迫した関係に踏み込もうとはしてこなかった。そんな鬱々とした過去の記憶も、たびたびさやかの前に立ち現れる。
「さやかは、自分の過去をとても大きな重石として捉えていると感じました。あの時、手を差し伸べてくれなかった両親に対する感情が、いまでもたまにフラッシュバックしてしまうんです」。
なかでも象徴的なのが、普段は見せない激しい感情を、さやかが爆発させる場面だ。
「親子だからこそぶつかってしまう場面は、とてもリアルで。演じている私自身の心も痛かったです。さやか目線の痛みもそうですし、お母さん目線のヒリつきも、さやかとして感じていたので。『仲良くしたい』という気持ちももちろんあるのに、自分が期待していたものとは違う温度感の言葉を家族からかけられたりすることで反発し、心を閉ざしてしまう。物に当たるのはしんどかったですが、普段、親には見せられないさやかの本心が、あの場面には表れているのではないかなと思います」。
