角川春樹、最後の総監督作『星の教室』のテーマは“AIとの戦い”。『犬神家の一族』『時をかける少女』と遜色ない映画と中川龍太郎監督を絶賛
11月6日(金)公開予定の『星の教室』。その完成披露舞台挨拶が10月6日、TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて行われ、桜田ひより、仙道敦子、小林虎之介、真木よう子、小泉孝太郎、中尾ミエ、山本學らキャスト陣と中川龍太郎監督、角川春樹総監督が登壇。撮影当時のエピソードや作品に込められた想いなどが語られた。
1976年に公開されるや社会現象を巻き起こした『犬神家の一族』にはじまり、『セーラー服と機関銃』(81)、『時をかける少女』(83)、『Wの悲劇』(84)など、数々の名作を世に送り出し続けてきた角川春樹にとって“最後の総監督作品”となる本作。
舞台は、様々な事情で義務教育を修了できなかった人々が学ぶ夜間中学。年齢や国籍を超えて集まった生徒たちが、それぞれの悩みや葛藤と向き合いながら、学ぶ喜びや希望、仲間との絆を育んでいく物語で、人生をやり直す勇気と人とのつながりの尊さを温かく描いた、世代を超えて心に響く感動作となっている。
無事に完成披露を迎えられた感想を聞かれた桜田は「この日を迎えられたことをとてもうれしく思っていますし、こうして登壇している方々以外のキャストの方だったり、熱量を込めて作ってくださったスタッフの皆さんも、本当に楽しみにしていたので、皆さんと作り上げた素敵なシーンの数々がこうして1本の映画になっていることもとてもうれしい。皆さんに早く見てほしい気持ちでいっぱいです」とコメント。
また、中学中退を選択した主人公・潤間さやかというキャラクターと向き合ううえで意識したことを聞かれると、「さやかちゃんは孤独を抱えているけど、心の底では自分の未来や学校に対して、すごく前向きな気持ちを秘めている女の子だったので、まずその気持ちに寄り添うことを大切にしました」との意見を聞かせてくれた。
そうしてキャスト陣が自身の演じるキャラクターや現場の雰囲気について話すなか、舞台挨拶の中盤には角川総監督がステージに登壇。脳梗塞からの復帰後、初の公の場への登場となる角川総監督は、中川監督の力量に期待を寄せ、今後、どんな映画を撮るのか楽しみだと話す。
「角川映画は50周年を迎え、『犬神家の一族』から50年目の節目に本作『星の教室』は誕生しました。私の親しい、亡くなった人ですが、紀伊国屋書店の2代目社長は、こう言っていたんですね。人生には3つの出会いがあると。ひとつは“本との出会い”。ふたつめは“人との出会い”。三つめは“自然との出会い”であると。私はその話を聞きながら、4つめの出会いもあるなと思っていて。それは、“映画との出会い”です。50年で、私はアニメーションも含め76本の作品を手掛けました。そのなかでも、自他ともに代表作だと認めている作品が5本あって。それは、市川崑さんの『犬神家の一族』、大林宣彦さんの『時をかける少女』、澤井信一郎さんの『Wの悲劇』、深作欣二さんの『蒲田行進曲』、佐藤純彌さんの『男たちの大和/YAMATO』なんですけど、中川龍太郎監督の『星の教室』は、それらの5作品と比較しても遜色のない作品だ…というのが私の感想です。これからの中川監督の作品にも非常に興味があり、きっと素晴らしい作品を作り続けてくれるだろうと期待しています」。
また、今回の作品では“制作の姿勢”においても、あるテーマを念頭に掲げていたという。「今回の映画を作るうえでのテーマは“AIとの戦い”でした。いまやたいていの映像はAIでできてしまうし、コミックもAIが絵を描いてしまう。そしてそれがビジネスとして成功しているという、そういったなかで映画を作ることになったわけですが、スタッフを集める際もつねに意識していたのが、今回の作品はAIとの勝負になる…ということでした。どんなに精巧に作られていても、AIには命も魂もない。だから魂を込めて、命のある作品を作ろうというのがテーマでした。『星の教室』は、AIには当然、打ち勝てたと思っていますので、これから観ていただいて、この映画に対して感動していただけたのであれば、是非、その感想をSNSで広めていただけると幸いです。ちなみに撮影自体はわずか3週間で撮りきったもので、ハードだったぶん、スタッフからも文句が出ていたのですが、完成した作品を観たスタッフは皆、『感動しました』『5回以上泣きました』と言ってくれるんですね。私自身も試写会で、感動して立ち上がれない方たちがいらっしゃったのを実際に目にして。それこそまさしく、魂を込めた映画である証明だと思うので、大勢の方に感動していただける作品が完成したと自負しております」。
これを受けて、中川監督も作品の出来栄えに自信をのぞかせ、以下のように返し、舞台挨拶は盛況のうちに終了した。「自分は高校時代、『犬神家の一族』を観たことが映画の世界に入るきっかけだったので、角川さんのそういった姿勢にはグッときました。本当に角川さんの精神がこもっている作品なので、大勢の方に観ていただいて、そうした理念が届くといいなと思っています」。
取材・文=ソムタム田井
