『WEAPONS/ウェポンズ』で激突したオースティン・エイブラムスとジョシュ・ブローリンが再共演!『クジラに落ちた男』で紡ぐ不器用な父と子の絆
全米を騒がせた話題作『WEAPONS/ウェポンズ』(25)で共演し、強烈なインパクトを残したオースティン・エイブラムスとジョシュ・ブローリン。注目の2人が再びタッグを組み、深く複雑な「父と子」のドラマを繰り広げる最新作『クジラに落ちた男』が10月16日(金)より公開される。ここでは、2度目の共演となるエイブラムスとブローリンの関係性にふれつつ、この2人だからこそ生み出せた本作の「父と子の絆」の真価に迫る。
ピューリッツァー賞受賞作家ダニエル・クラウスの傑作小説を実写化した本作は、海に潜った主人公ジェイ(エイブラムス)が、巨大なマッコウクジラに丸呑みされ、酸素が尽きるまでの1時間で脱出を目指す前代未聞のサバイバル映画だ。彼にとっての頼みの綱は、亡き父ミット(ブローリン)からの教えのみ。“クジラに丸呑みされる”という異色のシチュエーションのなかで、果たして2人はどのような“親子の物語”を紡ぎ出すのか。
衝撃作『WEAPONS/ウェポンズ』での狂気あふれる共演から一転、すれ違う“父と子”として対峙
『WEAPONS/ウェポンズ』は、スマッシュヒットを記録したホラー映画『バーバリアン』(22)のザック・クレッガー監督が手掛けた話題作。ある街で深夜に17人の子どもたちが突如姿を消す、不可解な集団失踪事件を描いたサスペンス・スリラーだ。
同作でブローリンは失踪した児童の行方を追う父親アーチャー役を演じ、対するエイブラムスは麻薬中毒者で泥棒のジェームズ役を熱演。激しい肉弾戦ともみ合いの末、アーチャーがジェームズの頭部を叩き潰すという衝撃的な展開となったが、その緊迫感漂うストーリーのなかで、2人は画面越しに強烈なインパクトと圧倒的な存在感を放った。なかでもエイブラムスはその迫真の演技が高く評価され、クレッガー監督の次作『バイオハザード』(公開中)でも再びタッグを組むほどの信頼を獲得している。
役者魂を激しくぶつけ合った2人が、本作『クジラに落ちた男』ではまた別の関係性で衝突。すれ違い、互いを深く傷つけ合ってきた「父と子」として、さらに濃密な人間ドラマを繰り広げる。
若手実力派×圧倒的存在感を放つ名優の運命的キャスティング
『クジラに落ちた男』の主人公ジェイは、亡き父への愛憎と強い罪悪感を抱えながら、極限の「クジラの体内」で命を懸けたサバイバルに挑む難役だ。この重要人物の選定にあたり、製作陣は妥協なき選考を重ねたという。プロデューサー陣は「18歳から27歳くらいまでの若手俳優はほぼ全員検討した」と振り返り、オーディションを受けた候補者は実に数百人に上ったと明かしている。最終的に数人に絞った選考で、エイブラムスが圧倒的適任であることは一目瞭然だったという。プロデューサーの1人であるアラン・マンデルバウムは「彼の演技力は群を抜いており、最初から驚くほどの力強さを感じさせた」と当時の強烈な印象を明かす。
テレビドラマ「ウォーキング・デッド」や「ユーフォリア/EUPHORIA」などの話題作で頭角を現したエイブラムスだが、今回の役柄について次のように語る。「父が亡くなるまで、ジェイは怒りと苛立ちからまともに口をきけず、強い罪悪感を抱いていました。愛情はとても深いのに、完全には通じ合えなかった。だからこそいま、すべてを正そうと必死になっているのです」。本作の監督であるブライアン・ダッフィールドも、この不器用でぎくしゃくした親子の関係性こそが物語の核心だと確信していた。
一方、息子の心に深い爪痕を残す厳格な父親ミット役には、アカデミー賞ノミネート俳優のブローリンが抜擢された。製作陣が「人物の本質を表現するのに最適な役者。普遍的な父親らしさもあり、ミットにぴったりだった」と自信をのぞかせるとおり、ブローリン自身もまた脚本に強く惚れ込んでいた。ブローリンは初めて脚本を読んだ時のことを「終わってほしくなくて、読む速度を落としたほどです。読み終えた原稿を胸に抱え、声を上げて泣きました。それほど深く心に響く、詩的で生々しい物語だったのです」と熱く語っている。
絶望の暗闇で交錯する「父親の教え」。単なるサバイバルを超えた胸を打つ親子ドラマ
本作の真の魅力は、息をのむサバイバル劇と、そこに交錯する「父と子の魂の対話」だ。プロデューサーのブライアン・グレイザーは語る。「この物語のすばらしい点は、まさに父と息子の物語でもあることです。ジョシュが演じるのは、子どもを安易に抱きしめず『愛している』とも言わない世代の父親。そんな父親と、命の懸かった極限状態のなかで息子はどう折り合いをつけるのか。それが作品の中心にあります」。
さらにグレイザーは、2人の圧巻の芝居についてこう太鼓判を押す。「オースティンは役に深く打ち込み、精神的な強さと奥行きを持って作品を成立させています。そしてジョシュは、体力も権威もある一方で温かみには欠ける強い男の変化と衰えを見事に演じきりました。人物が弱っていってもなお残る強さを表現し、観客に単なる同情を求めない圧倒的な演技です」。そうしたプロデューサーの言葉どおり、この2人の魂のぶつかり合いによって、単なるサバイバル劇を超えた、血の通った濃密な人間ドラマが生み出される。
実際に劇中で描かれるのは、まさに命のタイムリミットと隣り合わせの葛藤だ。極限状態のなか、ジェイの脳裏に蘇るのは、かつて厳しい父から叩き込まれたダイビングの知恵と、伝えきれなかった互いの想い。息を呑む「クジラの体内」からの脱出劇という圧倒的なエンタテインメントでありながら、その渦中で描かれる不器用な父と子の絆が観客の心を深く揺さぶる。手に汗握るスリルと熱い人間ドラマが融合した本作の真価を、ぜひ劇場のスクリーンで確かめてほしい。
文/山崎伸子
