飛び散る鮮血に宙を舞う生首…最新作『八つ墓村』へ連なる「金田一耕助」シリーズのホラー的演出
ミステリー映画を目指しながらホラー要素が散りばめられた市川崑監督版
金田一耕助映画は、高林陽一監督、中尾彬が現代的な金田一を演じた『本陣殺人事件』(75)で復活。この作品は設定を現代にしたため、犯人の動機に時代とのずれを感じさせたが、殺人のトリックを細部まで映像化したことで、ミステリー小説としての横溝作品のおもしろさを再認識させるものになった。
そして角川映画第1弾『犬神家の一族』(76)が公開された。市川崑監督、石坂浩二が金田一を演じたこのシリーズは、2006年のリメイク版まで6作を数える人気シリーズになった。ほかにも市川監督は、豊川悦司が金田一を演じた『八つ墓村』(96)を作っている。市川監督はアガサ・クリスティーをもじって久里子亭という脚本家のペンネームを持っているほど、ミステリー小説のファン。それだけにこのシリーズでは、連続殺人事件の謎解きに主眼を置いて、複雑な人間関係を絡めたミステリー映画を目指したが、一方ではホラー描写も多い。
海外ホラーと相対する日本的土壌に根差した恐怖
例えば、『犬神家の一族』でビジュアル的に印象的なのは、戦争で顔に傷を負った佐清(あおい輝彦)がその傷を隠す白いマスクを親族の前で剥いで見せる場面や、別の人物が佐清になりすましていたとわかった母・松子(高峰三枝子)が、彼の後頭部に斧を振り下ろして血しぶきが飛ぶ場面。さらにはその人物の死体が湖面から逆さになって、足だけ突き出ている場面など、いずれも観ただけで怖さが伝わってくるシーンが登場する。
また、第3作『獄門島』(77)で第2の犠牲者、雪枝(中村七枝子)が死んだあと、釣鐘に首を挟まれて、彼女の首が千切れて飛ぶシーン。あるいは第4作『女王蜂』(78)の冒頭で、殺された遊佐(石田信之)の死体の腕が、いきなり動きだした時計台の歯車に巻き込まれて飛ぶシーンなど、インパクトある残酷描写を市川監督は挿入している。
その理由として、時代的な背景も影響している。当時はオカルト&ホラー映画のブームで、ホラー大作『オーメン』(76)には落ちてきた避雷針に突き刺さって死ぬ人物や、トラックの荷台から滑り落ちたガラスで首を切られる人物が登場。超能力少女がプロムパーティーを修羅場に変える『キャリー』(76)、魔女の巣窟であるバレエ学校に入学した少女の恐怖を描く『サスペリア』(77)も立て続けに公開されたことから、市川監督は海外のホラー映画とは違った、日本的な土壌に根差した恐怖をこのシリーズに盛り込んだのだ。そして、原作小説もそんなホラー的描写になじむ雰囲気を持っていたのである。
ホラー表現の極致となった野村芳太郎監督版『八つ墓村』
そのホラー表現の極致が、野村芳太郎監督による『八つ墓村』(77)だった。落武者伝説に始まる村の因縁話を、怨霊の呪いが現代まで続いていることとして描いたこの映画は、完全にミステリーよりもホラーであることを目指していた。ほかにも、死者の幽霊に怯える人々が降霊術の儀式を行う『悪魔が来りて笛を吹く』(79)、二組の双生児にまつわる孤島の連続殺人を描いた『悪霊島』(81)といった金田一耕助映画が作られたが、いずれも単なるミステリーではなく、ホラーの要素を含んだ作品になっていた。
そういう意味でも新作『八つ墓村』はホラー要素満載で、ミステリーの部分はかなり控えめだが、やはり横溝映画の系譜を継いだ一本なのである。
文/金澤誠
