『バックルームズ』ケイン・パーソンズ監督に問う“映画”との距離、生い立ちからひも解くアイデアの源【宇野維正の「映画のことは監督に訊け」】

『バックルームズ』ケイン・パーソンズ監督に問う“映画”との距離、生い立ちからひも解くアイデアの源【宇野維正の「映画のことは監督に訊け」】

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北米公開時20歳(現在21歳)にして、長編映画監督デビュー作『バックルームズ』で世界中に“バックルームズ現象”を巻き起こしたケイン・パーソンズのサクセスストーリー、そしてネット掲示板やYouTubeに端を発するそのバックグラウンドのユニークさと作品の革新性については、既に様々なメディアで語られ、本人自身も語ってきたことだろう。今回、日本公開のタイミングに合わせて来日したケイン・パーソンズに直接問いたかったのは、そんな“若き天才クリエイター”と“映画”との距離だ。

映画監督に“映画”のことを訊くのは当たり前じゃないかと思われるかもしれないが、『バックルームズ』のスコアも(エド・ヴァン・ブリーメンとの共同で)手掛け、映画公開後もこれまでのようにYouTubeの自身のチャンネル、「Kane Pixels」に動画投稿をしているケイン・パーソンズにとって、映画界での成功はそのまま今後のキャリアを決定づけるものではない。そもそも、ビデオゲームやアニメーション、YouTube動画やショート動画に対して、映画というアートフォームの優位性そのものが揺らいでいるこの時代。その時代の申し子とも言えるKane Pixels(この名前で彼のことを最初に知った人も世界中に何十万人もいる)ことケイン・パーソンズにとって、映画制作とは、映画ビジネスとは、そして「映画的」とは何なのか?興味深い家庭環境の話なども含め、このタイミングでしか訊けないであろうことを訊いた。

「映画のことは監督に訊け」最新回に『バックルームズ』で来日したケイン・パーソンズが登場
「映画のことは監督に訊け」最新回に『バックルームズ』で来日したケイン・パーソンズが登場撮影/興梠真穂

「この作品に関わっている身近な人たちのためになるのであれば、できる限り時間を割くようにしています」(ケイン・パーソンズ監督)

――今日はこれからテレビ番組に生出演すると聞いています。長編映画デビュー作を撮って、その作品が世界中で大ヒットし、こうして日本に来てプロモーションをしている。まるで自分がポップスターになったような気持ちになったりはしませんか?そしてそれはあなたの人生にとって、またあなたのこれからの作品にとって、なにか影響を与えることになると思いますか?

ケイン・パーソンズ(以下、ケイン)「もし世間に広く知られる存在になるか匿名のままでいるか、どちらかを選べと言われたら、絶対に匿名を選びます。ですが、確かにいまの状況ではそうはいきませんね。結局のところ、いまの自分は公の人物になってしまっているので、それとうまく付き合う方法を見つけなければなりません。ただ、僕が個人的に感謝していて恩恵を感じているのは、特定の人たちや特定の企業とのミーティングを設定できる機会が格段に増えたことです。そのおかげで、自分の作品のなかで表現したい、ワクワクするようなテーマについて、かなり深くリサーチできるようになりました。今後の作品づくりのために、有益なネットワークを広げるという点ではすばらしい機会になっていると思います」

【写真を見る】A24公認『バックルームズ』日本オリジナルTシャツを見事に着こなすケイン・パーソンズ監督
【写真を見る】A24公認『バックルームズ』日本オリジナルTシャツを見事に着こなすケイン・パーソンズ監督撮影/興梠真穂

――映画監督によってはほとんどインタビューを受けないようなミステリアスな存在の方もいますが、将来的に、もしそういう選択肢もあり得るとしたらそうなっていくかもしれない?

ケイン「最終的にはそうなると思います。いまの活動の一部には、契約上の義務であったり、周囲から強く望まれてやっているものもあります。この作品に関わっている身近な人たちのためになるのであれば、できる限り時間を割くようにしています。ただ、この『バックルームズ』のプロモーションを引き受けた時、今回のように受け入れられ、これほど多くの人々に観られることになるとはまったく予想していませんでした。その点は驚きでしたね。でも将来的には、完全に姿を消すわけではないにしても、連絡を取ったり見つけたりするのは難しい状態に戻るだろうと思います。…なんてね(笑)」

「僕にとって音楽は、世界を解釈するうえで非常に大きな部分を占めています」(ケイン・パーソンズ)

――あなたがまだ21歳であるということ、その若さについては散々いろんな場所で語られているわけですが、自分が『バックルームズ』を観てとても驚かされた事実のひとつは、あなたが本作の見事なスコアまで手掛けていることです。今後の作品でも、スコアは基本的にご自身で制作しようと考えているのでしょうか?

ケイン「はい。映画のスコア制作は本当に楽しいです。僕はこれまで映画制作に費やしてきたのと恐らく同じくらいの時間を、音楽制作にも費やしてきました。だから、劇伴を作るプロジェクトがない時でも、頭のなかにある架空のシーンや、まだ作っていない映画のワンシーンのために、劇伴としてしっくりくる音楽をただ作曲してみるのが好きなんです。音楽活動にはかなり積極的に取り組むようにしていますし、正直なところ、自分が制作する作品はすべて自分でスコアを手掛けたいと思ってます」

バックルームズに迷い込む家具屋の店主、クラークを演じるキウェテル・イジョフォー
バックルームズに迷い込む家具屋の店主、クラークを演じるキウェテル・イジョフォー[c]2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

――音楽の制作もしていることが、映像制作や映画制作にどのような具体的な影響を与えていると考えていますか?

ケイン「僕にとって音楽は、世界を解釈するうえで非常に大きな部分を占めています。音楽は記憶を形成する際の強力な道しるべになりますし、僕自身、音楽を聴く習慣や音楽独自のテクニックを使って、自分の記憶を辿ったり、導いたりしてきました。音楽は場の雰囲気を変え、無数の異なる感覚を生みだすことができます。その人が体験する聴覚的な要素次第で、まったく異なる感情や表情を見せることができるんです。映像制作について正直なことを言うと、多くの場合、映像よりもむしろその音のほうが重要だとすら思ってしまうほどなんです」



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