重岡大毅はどうやって“航”になった?『5秒で完全犯罪を生成する方法』で見せた“役として生きる”演技
殺人を犯した妹を守るために、兄が生成AIを駆使して完全犯罪を実行に移そうとする『5秒で完全犯罪を生成する方法』(公開中)。「マスカレード・ホテル」シリーズなどで知られる岡田道尚のオリジナル脚本を『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(25)の新鋭、近藤亮太監督が映画化した本作は、私たちの生活に欠かすことができなくなったAIがモチーフの最も今日的なクライムサスペンスだ。
2人暮らしの兄、初海航に扮した重岡大毅と妹の幸来を演じた原菜乃華の共演も話題だが、とりわけ重岡の親しみやすいキャラがこの映画の味わいと仕掛けを成立させる重要な役割を担っているのは間違いない。そこで本コラムでは彼の芝居の軌跡を振り返りながら、本作で見せた“俳優、重岡大毅”の魅力をひも解いていきたい。
せつない恋愛ドラマに本格ミステリー、禁忌の呪文をめぐるホラー…ジャンルレスに活躍!
重岡が内に秘めていた俳優の力を覚醒させ、観る者を驚かせたのは2016年の『溺れるナイフ』だろう。閉塞した田舎の環境のなか、不思議な魅力を放つ神主一族の息子コウ(菅田将暉)との叶わぬ恋やある事件の傷に苦しむ夏芽(小松菜奈)。そんな彼女に思いを寄せるクラスメイトの大友を、重岡が絶妙な距離感と屈託のない笑顔で体現している。
落ち込む夏芽を笑顔にする夜のバッティングセンターのシーン、風邪で寝込む彼女を元気づけながら顔を少しずつ近づけ、そっと唇を重ねるキスシーンもとても自然で大友らしさを印象づけた。さらに、一度は付き合った夏芽から突きつけられる別れの悲しみを、全力で吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」をカラオケで歌うことで吹き飛ばし、号泣していた彼女も笑わせてしまうという、映画史に残る一連で多くの観客の涙を誘ったのも印象的だった。いまでは「憑依型」と言われることも多い、彼自身の感情とシンクロさせた没入度の高い芝居の核をこの時点で早くも作り上げていた。
そんな、“いい人”を演じさせたら右に出る者はいない重岡のキャラとアプローチはあらゆるジャンルで爆発!『リング』(98)の中田秀夫監督が清水カルマの同名ホラー小説を映画化した『禁じられた遊び』(23)では、橋本環奈とW主演を務め、心優しい父親役に。幼い息子に冗談のつもりで教えた呪文で蘇る、まるでモンスターのような亡き妻(ファーストサマーウイカ)に脅えまくり、どんどん壊れていく様を醜く歪んだ表情と自然体の芝居で作り上げ、恐怖を生々しいものにしていた。
東野圭吾の同名小説を映画化した密室ミステリー『ある閉ざされた雪の山荘で』(24)の重岡にも目をみはるものがある。7人の役者が最終オーディションの場となる田舎の山荘に集められるが、そこで“本当の連続殺人事件”が起きる。全員が互いに脅え、疑心暗鬼になるなか、ほかの6人とは違う劇団出身の久我に扮した重岡が他者との距離を詰めるのが上手い持ち前の誠実なキャラで状況を整理。まるで探偵のように冷静に謎を暴き、観客を気持ちよく劇中に引き込んでみせた。
そして、実話がベースの『35年目のラブレター』(25)では、戦時中に生まれ、教育をちゃんと受けることができなかったために文字の読み書きができない寿司職人、西畑保の青年時代を好演。読み書きができないことを最愛の妻、皎子(上白石萌音)にも打ち明けられない不器用な保を健気な芝居と全身から感じられる温もりで表現。笑福亭鶴瓶が演じた、現在の保につながる人情味のある人柄や佇まいを作り上げ、観る者をほっこりさせた。
